雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

デジカメ考

C-8080WZを買って分かったことは,これはデジカメ隆盛のきっかけをつくったQV-10の末裔というよりは,一眼レフや電子化で諸外国と差別化した日本のカメラ産業の末裔だということだ。恐らく,QV-10の正当な後継者はCASIOの200万画素,300万画素AU携帯電話になるのだろう。
画質に蘊蓄をたれる評論家がいて,映像表現に芸術性を求めるような世界があって,やれ色合いがどうとか,ぼけ味がどうとか,といった世界である。それは素晴らしく洗練されているのかも知れないが,やはり光学機器としてのデジカメの世界であって,電子機器のデジカメの世界ではない。無論,一瞬のシャッターラグで数MBのデータをFlashに突っ込む高画素デジカメは,それ自体,非常に強力なリアルタイム情報処理を行っている高性能のコンピュータであることはいうまでもないが,付加価値はMIPSではなく,撮った写真の相互評価で決まる世界なのである。
ピュア・オーディオとかカメラとか,そういう世界はそういう世界で残るんだろうけど,その先に未来とか展望というのはなくて,ハイエンドデジカメというのは,Web向けやメモ取りというニッチ市場から徐々に発展したデジカメという破壊的イノベーションが,本丸である趣味としての写真市場に参入した,その象徴とみた方がいいに違いない。
という観点で,いまのままではデジカメの性能がそれなりに成熟した段階で,買い換えスパンが長くなり,特に国内のデジカメ市場は急速に縮小する可能性がある。それを防ぐために,まだ成熟していない特徴を攻めることがますます活発になるに違いない。まず,動画はVGA, 30FPS, MPEG4が徐々に増えつつあるが,これはじきにH.264となり,30FPSから60FPSへ,VGAから720P,1080P,さらに走査線2000本,4000本という世界になろう。静止画では光学性能を上げるためのコストが馬鹿にならなくなっていることも,そういった動画強化に向かわざるを得ない原因のひとつだ。
そういった一般的な軍拡競争の他に,デジカメの進歩の道はないのだろうか。小型化もひとつだし,全く違った需要の創出も考えられる。パンフォーカスの光学系2系統とSHARPの3D液晶を組み合わせて,3Dデジカメというのはどうだろう。パンフォーカスだと光学系の精度がイマイチなので,動画にするとか,立体物の座標取りを主目的とすることも考えられる。何なら3D液晶じゃなくHMDを表示媒体として,体感できる景色を再現するのも手だ。光学系で広角を頑張るのではなく,パンフォーカスのCCDをいろんな方向に向けて重ね合わせてパノラマ映像をつくるというのも面白い。いまのデジカメ市場は良かれ悪しかれカメラの基本設計の上に成り立っているが,市場が成熟し,コンピューティング・パワーをさらに持て余すようになれば,CCDを潤沢に使ったデジカメとは別のデジタル・デバイスがもっと増えてくるのかも知れない。