雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

政策立案・実施業務の資格化と,年功序列人事の廃止

(この辺の歴史的経緯は専門ではないので,誤りがあれば指摘してほしい)意外にも官民ともにエリートに終身雇用・年功序列が約束されたのは戦後のことのようだ.現在の国家公務員一種試験に相当する高等文官試験は,どちらかというと弁護士のような資格であって,試験合格後にどこかの省庁に就職しても,その省庁が一生面倒をみてくれる訳ではなく,逆に優秀な人材は省庁のしがらみと関係なく,あちこち活躍の場があったのだろう.
年功序列・終身雇用は経済の成長期に有為な人材を集め,長期的視野で育成するには有効な方法だったが,成熟社会にあっては行政の非効率化や,業務・人事の硬直化,ポスト新設のための縄張り争い,大きな政府への志向などの温床となっている.特に時代の変革期にあって,省庁横断的な政策課題が増えつつある中で,緊急性の高い案件に限って各省横並びで似たような勉強会を開き,貴重な専門家の時間を奪い合っては主導権争いに勤しむなど,その弊害も目に余るようになってきた.
予算要求のマジックワードとしてICTがいつまで持つかは甚だ疑問だが,ICTが社会に浸透すればするほどICT以外の実社会と結びついた課題が増えるはずで,仮に情報通信省をつくったところで,少しばかり必要な調整先が減るにしても,情報通信省と他省庁との縄張り争いはなくならない.例えばRFIDひとつとっても国土交通省(物流),農林水産省(食品トレーサビリティ),外務省(パスポートの電子化),警察庁(犯罪対策)などが絡んでいるのである.
むしろ省益よりも国益にコミットした方がキャリアパスの拡がる制度にしていくことの方が,即効性を期待できる.例えば課長補佐以上の役職を全て資格・公募・任期制にしていくのである.外からみてキャリア官僚というと法案作成から予算取り,執行,関連部局との調整まで政策形成の何でもこなすスーパーマンという印象があったが,実際に話を聞いてみると,文章のうまいひと,予算取りのうまいひと,既存の法体系と整合性のある法案を書けるひと,関連部局との調整がうまいひと,政治家対策がうまいひとなど,そのスキルは百人百様のようだ.
戦前の高等文官試験のようにひとつの資格でカバーした方がいいのか,行政企画士,予算編成士,法案起草士といったかたちで専門分化した方がいいかは議論が必要だけれども,弁護士と同じように資格制にして,試験を受かった人間は数年間,行政研修生として政策現場に放り込めばいい.中には本省で予算組みを経験した後で地元自治体に転じるとか,野党で法案を書きながらポストの空きを虎視眈々と探すとか,ひとつの政策課題を追っかけて省庁を転々とするとか,大学で何年か充電して大きなネタに取り組むとか,いろいろなパスが出てくれば面白い.キャリアアップのためには最初に就職した官庁の大臣官房ではなく,魅力的な空きポストを持っている全てのひとを相手にパフォーマンスするのだ.
資格化で政策人材が産官学に還流すれば,いろいろな副次的効果を期待できる.いまは政治主導といいつつ実際には官僚出身の政治家や,現役官僚のアルバイトに政策立案を依存している与野党の政策立案能力も,いずれ米国並みに底上げされるに違いない.公共選択論をはじめとした学術系に偏りすぎている大学の政策教育も改善されよう.だいたい,スキルの高いキャリア官僚が実際に職を失うリスクなんか小さいのだし,あてのない身分保障なんか捨てて,もっとアグレッシブなキャリアパスを描けた方が,有為な人材を集められるのではないだろうか.
といっても制度を決めるのは役所なのであって,blogにこんな妄言を書くことは自己満足以外の何者でもないのだけれども.折に触れて役所の縄張り争いに巻き込まれることにホトホト疲れていて,やっぱり問題の本質は別レイヤにあるということについて,そろそろ整理したかたちで真面目に議論したいと考えた次第なのであります.