雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

巨大プロジェクトにどう鈴をつけるか

90年ごろの段階で米国と競争して放送のデジタル化を目論んだまでは仕方なかったけど,e-Japan計画でブロードバンドの普及目標を立てたあたりで,ネグロポンテ・シフトといった議論もあったし,映像のネット配信が当たり前になることも分かっていたのだから,引き返す方法もあったのではないか.
問題は既存事業者とのコンセンサス形成に重きを置きすぎて,時代の変化を読み損ね,途中からは現実から目を背け,官僚の無謬性というフィクションを守り抜くための消耗戦に突入してしまったことにある.
無駄なアナアナ変換に血税をン百億円(もっと?)も垂れ流し,世界で売れない独自技術への投資で国内の家電メーカーや放送局を疲弊させ,モバイルで需要の急増しているUHF帯を潰して使い勝手の悪いVHF帯を空け,誰も望んでいないドキレイな放送を流すというのは,殿堂入りの失政としかいいようがない.ほとぼりがさめた段階で,政策過程論の興味深い研究対象となるだろう.
個人的な興味は政策決定に関わった当事者が誰かではなく,この国では青島知事による都市博中止のようなポピュリズムを除いて,巨大プロジェクトを止める回路がないことだ.サンクコストが大きくなればなるほど,失敗と分かっていても現実から目を背けて依怙地になってしまう.これは政策担当者ではなく制度や文化に起因した問題である.