雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

地デジって何のためにやってるんだか

いまさら話題にしても新味に欠けるんだけど...
いうまでもなく受像機のデジタル化と,放送のデジタル化は直接的な関係はない.間接的にはデジタル放送を受けるために受像機のデジタル化が必要で,ついでだから他にも機能を付け加えましょう,といった話があるのかもしれないが,昨今のテレパソはじめ,デジタル機器でアナログ放送をみることもできる.
テレビがインターネットに繋がることも,デジカメの画像を映せることも,受像機のデジタル化による恩恵であって,世のテレパソやHDレコーダがアナログ放送でも既に実現している.それをやりたいだけなら,そもそも放送のデジタル化は必要ない.いまのテレビに満足しているひとも少なからずいるのだから,むしろデメリットしかない.
画面が綺麗? そんなことを気にするハイエンドユーザーは衛星放送でカバーすれば済む話.昼間っから通販番組ばっか流して公共性のかけらもない現状を改善できるし,民放4局体制にない地方在住者にも朗報だ.
然るに,アナアナ変換に数百億円,下手をすれば千億円を超える国費を投じ,移動通信事業者が必死に取り合っているUHF帯を潰して地上デジタル放送を始めるのだから,もうちょっと気の利いた話ができないものだろうか.
まぁデジタル放送を巡る議論は1960年代以来のハイビジョン研究や1990年代初頭の『デジタルテレビ日米戦争―国家と業界のエゴが「世界標準」を生む構図』からの惰性を止められなくなっていることは公然の秘密というか,「王様は裸だ」というと干される構図が出来上がってしまっているというか,パネルに上がった当事者たちも,むしろ戦後処理の言い訳に腐心しているのかも知れないけど.この財政難の折,このカネもっと前向きな用途に使えないものか.
「デジタル化によって消費者が納得できるような利便性を提供できるようによく考えていく」だなんて「もっと気の利いた言い訳を,これから考えます」としか聞こえない.こんなユルいことが許されるのは,田中角栄がマスコミ集中排除の原則を骨抜きにした結果なんだけど.

今、NHK教育TVの土曜フォーラム「2011年テレビの未来」を見終わったところだ。2011年のTV放送「強制」デジタル化についての公開パネルディスカッションの中継録画である。残念ながら、気が付くのが遅く後半しか見ることが出来なかったが、はっきり言って面白かった。パネリストは役人、NHK、TBS、松下の関係者などのデジタル化を推進する立場の人間が主体であったが、一人消費者の立場で主婦連の河村真紀子氏が正論を述べていた。特に氏の「デジタル化で便利になると言っても、番組表や天気予報を見ることが出来るようになる程度の話であり、とてもそれが(新しいデジタル対応TVの金額である)何十万円に値する便利さであるとは思えない」という発言には会場から大きな拍手があり、推進派のパネリストが苦笑いする場面があった。結局、それに対する明確な回答はなく、推進派からは「携帯電話でインターネットをするなんて6年前には思いもつかなかった。だから6年先(2011年)にはテレビはインターネットにつながることが当たり前になってもおかしくない」「デジタルビデオカメラのデータをメモリーカードでテレビに映すことができる」というようなあまり説得力のない反論しかなく、「デジタル化によって消費者が納得できるような利便性を提供できるようによく考えていく」というような、曖昧な結論になった。