雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

狼はどこへ行ってしまったのか

東京に大地震がくるぞとか,いずれ日本国債が暴落して金利が暴騰するぞといった話は根拠を聞くと何だかそういう気分になってくるのだけれども,くるぞくるぞといわれて何年も来ないと「何とかなるんじゃねーの」という感じに感覚が麻痺してくる.僕もあまりマクロ経済には詳しくないんだけれども,いつくるとも分からない金利暴騰リスクに備えて35年固定ローンを組むよりは,今月の何万円かが大事で短期固定の住宅ローンを組んでいるお馬鹿な小市民だ.
国債未達が起こった時はもうちっと何か起こるかなーと期待(?)したのだが,大して何も起こらなかったので,本当に何が引き金になるか分からなくなった.ああいうのは気分でポジティブ・フィードバックが働く世界だから,底流の疑心暗鬼と,そんな物語を補強するちょっとしたサプライズが重なれば,どうでもいいタイミングで悪夢のカタルシスは始まるのかも知れない.
しかし,いつくるとも分からないカタルシスのために今日を犠牲にする決断を民主主義的に下すことは難しい.小飼さんがご指摘の通り,小泉政権下でも国の借金は増えた.けれども,小泉首相のイニシアチブでジャブジャブ金を使った訳でもなく,自転車操業のお国を乗り継いで,ブレーキはかけたけど下り坂でした!という話であって,あれを小泉首相のせいにするのは酷ではないか.実を捨て名をとる実態なき改革風には辟易したけれども,政治の世界から経世会的な閉塞感を一掃したことは一定の評価をすべきだ.
しがらみの少ない小泉首相でさえあの程度の歳出削減しかできなかった背景は,誰もが指摘しているように官僚の抵抗と様々な特別会計だ.これをどうにかするには,橋本龍太郎のやったような看板の架け替えに過ぎない省庁再編ではなく,そもそも官僚の行動様式を変えるような改革が必要だ.具体的には例えば公務員の身分保障を外し,大臣官房によるスタッフ人事から,ライン人事へと切り替えるというのはどうだろう
最初に入省した省の大臣官房に生殺与奪を握られた役人に,省益ではなく国益を考えろといったって無理に決まってるじゃないか.みんなに出口を用意する責任が大臣官房にあるとすれば,天下り先を増やした奴がヒーローとして評価されるのは当然ではないか.下部構造としてのカネの流れを止めることもさることながら,上部構造としてのガバナンスに手を入れなければ片手落ちである.
道路公団や郵政の民営化も含めて,看板の架け替えなんざ結局のところ縄張りの引き直しに過ぎず,大衆相手のまやかしだ.しがらみも安定もなくなれば,官僚の中からも小泉首相のように,自分の美学のためだけに官僚支配をぶっ壊すような変人が現れるかも知れないではないか.
いまからはじめてカタルシスを避けられるのか甚だ疑問だけど,座して死を待つよりは幾分か気休めにはなる.

まあ、私がそういう心配をするのが大きなお世話なのかも知れない。私自身は家族を含め別に日本でなくとも生きていけるのだし。私よりもずっと日本に対する依存度が高そうなR30さんが心配無用といい、私が要注意というのは滑稽ですらある。

20年後も、笑っていられればいいのだが。

しかし、20年後ねえ。個人資産何百億の小飼氏はいざしらず、吹けば飛ぶようなへそくり貯金しか持たない僕なんざ、20年後のことなんて真剣に考えたら、こんなところで生きてられませんがな。依存度が高いというより、選択肢がないからこそそういう発想になるってことだと思うんだけどね。