雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

いまさら下流社会を読んだ

まぁ読み物としては面白いんだけど,一連の階層化論,たとえば橘木,佐藤,玄田あたりと比べると決め付けが多いしマーケ的な視点で書かれている.だったらそれを徹底して,最後まで「下流社会をターゲットに,こういうマーケティングすれば儲かりまっせ」とやればいいのに,最後のところで中途半端な政策提案に走ってるところがイタい.
要は不利なセグメントの子たちに受験の点数で下駄を履かせろ,という提案だが,実にお粗末だ.階層化と階級化は微妙に違うし,そんなセグメントをして情けをかける的な話は,ひとを馬鹿にしている.実務的にも,学力のばらけた子たちを教えるのは大変だし.著者は大学のことを教育機関ではなくブランドとしか考えていないのだろうか.
結果悪平等が駄目なら機会悪平等を,というコンセプトはいいんだから,バウチャー制であるとか,もっと現実的な提案をすればいいのに,もったいない.とりあえず,日用品の製品構成や価格設定を決めるときには押さえておくべき視点が入ってて参考になるけど,社会学の本と勘違いして読むと幻滅する.
キャッチーなタイトル,ステレオタイプな決め付け,一見もっともらしい根拠とかって,思いっきりノンフィクション系ベストセラーの定石を踏んでいて,ライターとしては,これくらい恥知らずに数を取りに行く気概がないと商売としては美味しくないんだろうな,と,著者の爪の垢を煎じて飲みたくなってきた.

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)