雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

消耗戦を超えて

Vas Vegasで行われているCESに行ってきた。我が国でも政局と絡みつつ通信・放送融合の議論が進んでいるけれども、今年のCESはGoogleやYahooが基調講演を行い出展するなど、これまでパソコンに閉じていたネット企業が家電や携帯電話に食指を伸ばしつつあることを象徴している。
一方でヒートアップしているのは日韓のFPD開発競争である。プラズマは松下が世界最大の103インチを出展し、サムソン、LGが102インチと追い上げている。液晶はSONYが82インチLEDバックライトのものを出展したが、これは韓国でサムソンと共同出資するS-LCDで生産されたもので、当然サムソンも同じパネルを使った82インチ液晶を出展していた。
どれもド迫力だが、ここまで大きくなるとニッチ市場という気もする。あくまで競争は基板の大型化による生産性改善を通じた価格競争力の向上であり、各社とも自社の生産設備の先進性を示す象徴として、超大型FPDを展示したのだろうか。
ここまではDRAMと同じ展開で、すでに数社が合併したり生産ラインをいくつか閉鎖したように、消耗戦で優勝劣敗がはっきりしてくるし、投資を手控えたら負けが確定してしまうので、ともかく体力の続く限り設備投資を続け、市況が下がるよりも早い勢いで原価を下げなければならない。しかし財務的には日本の各社ともサムソンと比べて利益率が低く、手元現金も少ないので、生産性向上とあわせて、いわゆるコモディティ化をいかに防ぐかが課題となる。
例えば液晶でサムソンと伍する設備投資競争を続けているシャープの場合、高コントラスト、動画でちらつかない、デュアルビュー、3Dといった高付加価値品に活路を見いだしているかにみえる。SONYLEDバックライトにしても、同様の路線だろう。けれども、それでどれだけ価格を維持できるか、或いは市況全体でパネルがだぶつき始めたときに、どれだけ捌けるかというと難しい問題である。マーケティングとなると価格設定にせよリベートにせよ広告にせよ、これはこれで体力勝負がきく世界なのである。
それに、日本では非常に画質に対するこだわりが非常に強いけれども、米国やアジア市場ではそれほど画質に対するこだわりが強くない可能性が高い。国内市場ではサムソンやLGを寄せ付けない強さを見せる日本勢が、米国、欧州での展開では遅れをとってしまったり、市場価格の収斂してしまう懸念もある。FPD市場はまだまだ国内での需要の伸びが期待できるとはいえ、海外でシェアを落とすと、いずれ最新設備による生産性向上で価格競争力を維持する戦略が、出口のところでつまづいてしまうかも知れない。
基板の大きさや価格競争力だけでみると日韓伯仲といえども、画質の面では日本に一日の長がある。これをどう専門家やAVマニアの蘊蓄に留めず、付加価値・販売力に変えて収益を上げ続けられるのか、これからがみどころだ。