「人材不足」って言うな!
ITに限らないんだろうけど,新しい分野って人材育成の必要性が強く指摘される割には,育った人の受け皿がどこにあるか分からない.月並みな話をすれば,ある分野のひとが足りないのは,足りないから高付加価値なのであって,足りていれば高値がつかない訳で,人材が足りた途端に捕らぬ狸だった事業機会も失われ,皮算用は弾けてしまうのである.
IT利活用でもオープンソースでもセキュリティでも何でもいいんだけど,諸外国と比べて足りないものは何でもかんでもヒト!ヒト!ヒト!ということに役所の中ではなっているけれども,もし市場が機能しているのであれば,いずれ需給は均衡するはずで,とりあえず神の手に任せておけばいい気がする.個々の政策がhot issueである時点ではヒトが足りないといっても,それがhot issueである時点で志しているひとはいるはずで,そこに1〜2年かけてカリキュラムを開発して,つくったカリキュラムを1〜3年間も展開すれば,ひとが育った頃にはその市場が飽和して,せっかく勉強した人々の人月は例によって出血大バーゲン,という話にでもなってたら目も当てられない.
時代の変革期に,諸外国と比べてひとが足りないかにみえる理由は,恐らく教育カリキュラムが整備されていないからではなく,柔軟に時代の変化へ対応できる人々を,その能力を必要としているところに配置できるような社会の流動性が欠けているせいなのだ.けれども決まって即効性を期待できない教育に力を入れて,カリキュラムをつくるヒトも,それを学ぶヒトも回り道をさせた挙げ句,本人たちが雇用の受け皿がないことに気づいた頃には担当官が異動している,という繰り返しは,そろそろ止めた方がいいのではないか.