雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ロングテール時代の産業構造

『グーグル』の佐々木俊尚さんとは3年くらい前に飲んだことがあって,その時も「数年前まで編集者はライターをどこで書いたことがあるかで選別していたのが,最近は名前をグーグルで検索して引っかかる記事を話題にしてくる.本名で検索してどんな記事が引っかかるかは,ライターにとって死活問題だ」という話をした.
『グーグル』を斜め読みして,ああこれはあの時の問題意識をもうちょっと敷衍したんだな,という風に感じた.ライターの端くれとしては,かつてどこに所属していたかより,どんな記事を書いたかで評価された方がチャンスがある.*1
ネット業界での競争という狭い枠組みで捉えるからWeb 2.0ではGoogleAmazonが一人勝ちなどという浅はかな指摘が出てしまうのであって,id:yucoさんが指摘するようにWeb 2.0での勝ち組はトップクラスのいい仕事をしているニッチ産業ではないか.この流れはWeb 2.0に限った話ではなくPCやインターネットの登場から一貫して続いている潮流であって,ネット外だけでなくネットの中でも「どんなに狭い土俵でもいいからそこでトップクラスのいい仕事をしているようなものは勝つ」世界が広がっている.だからこそ,創業数年のベンチャー企業が世界を牛耳るかのように書かれるのである.
実のところGoogle自体も時価総額はともかく売上や従業員数で考えればニッチ企業だし,かつてAlta VistaGoogleに駆逐されたように,技術革新によって乗り越えられないとも限らない.日本国内でのアクセス数に限れば今年中にmixiGoogleを抜くという予言もある.株価は成長期待で下駄を履いているから,技術的優位性や成長性に陰りがみえた途端,市場は過敏に反応するのではないか.
という訳で,Web 2.0が"地主制度2.0"かどうかは分からないけれども,そんなに捨てたものじゃないんじゃないかな.大手ポータルが無個性な総合サービスで競合し合うよりは,背後でGoogleに牛耳られていても多様なサービスがそれぞれ狭い世界でトップのサービスを目指す世界の方がいささか健全という気がする.

利益率は低そうななのに、やらなきゃ乗り遅れるWEB2.0のジリ貧競争にまきこまれ、同業他社と不毛なサービス合戦をしてボロボロになりながらも、得られるものは5%アフィ程度、どちらが勝とうが結局サービスを提供するGoogle様はしっかり儲かる。まさに死の武器商人に踊らされる紛争地帯。それがWEB2.0なんじゃないだろうか。

つまり、どんなに狭い土俵でもいいからそこでトップクラスのいい仕事をしているようなものは勝つ。ということなんじゃないかと。こういうのもweb2.0な勝ち組と言えるのではないか。

*1:実際のところ僕の名前で検索しても,仕事での講演録やら昔に書いたパブコメやらMLへの投稿ばかり引っかかって,ライターとしての仕事は百番目にならないと出てこないので困っている.この問題は近いうちに解決する予定