雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

競争一辺倒もNTT大同団結も過度に楽観的

要は竹中懇がNTT機能分離を提言するのに対し,読売新聞は国際競争力堅持の観点からNTTグループの大同団結を認めよ,と.米国がRBOC主導の地域独占に回帰していることは認めるが,彼らが日本市場を攻めにくるという話でもなし,昔と違って電話なんて地場のサービス産業に過ぎないんだから,昔ほど海の向こうの動向を気にする必要は感じない.
競争を促せば何だって安くなると勘違いしている竹中一派も問題なら,通信業はIP化で水平分業が進み,世界的にみると電話会社が国策企業でも技術革新の担い手でもなくなりつつあることに気づかず,NTTグループ大同団結で国際競争を乗り切れるなんて甘く考えている読売新聞の姿勢も過度に楽観的だ.

  • 日本の通信業は適切な競争環境にあり,通信料は世界的にみて充分に安い
  • 電話会社が技術革新の担い手だったのは過去の話.技術革新は大企業よりもベンチャー,軍事・航空宇宙への財政支出などから生まれている.日本は技術革新を育む生態系の再編で出遅れており,通信機器の内製率も下がり続けている
  • NTTグループではFTTHFMCNGNなど固定系のARPU維持を狙った研究開発が盛んだが,期待収益の観点から適切な資源配分であるかは謎.成長機会よりもグループ会社間のパワーバランスや,グループ・系列含めた生態系の維持に対する関心に終始しているのではないか.こんな状況でグループ大同団結を認めると,NTTの悪い意味で内向きなところを助長する懸念がある.とはいえ雇用に関しては団塊世代の引退で身軽になる訳で,この時期にNTT再々編を議論することは時宜を得ている
  • 量子コンピュータや暗号など,今も国策会社として基礎研究に投資している訳だが,競争促進によってその原資は減らざるをえない.NTTに代わって誰が日本の基礎研究を支えるのだろうか

という訳で,ぼくはNTTを無理にバラす必要はないし,IP時代に地域で分けるとか意味ない気がするけど,まだまだNTTは普通の会社ではないし,単に大同団結を認めるだけというのも先行きが不透明な気がする.いや制度設計って難しいし,どう主張しても政治的になっちゃうんだけどさ.

竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、近くまとめる報告書で、NTTの機能分離の必要性を強調する見通しだ。
一方、自民党の「通信・放送産業高度化小委員会」は、NTTの形態に問題があることは認めつつ、抜本改革の検討は2010年ごろにする方針を決めた。
通信事業は、なお技術革新が続いている。国内外の競争環境も、激変しつつある。ここは拙速を避け、変化の落ち着く先を慎重に見届けるべきだろう。
(略)
装いを新たにした通信の巨人が世界市場に乗り出そうとしている今、日本にも対抗する態勢が要る。