雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

NGN雑感

最近NGNについて聞かれることが増えた.NGNとはNext Generation Networkの略だが,具現化したらNext Generationではなくなるから名前が変わるのだろうか.研究所では既にPost NGNなる用語も出てきているようで,こうなると何が次世代なのか次次世代があるのか分からない.
最近ITUはSystems beyond*1といいNGNといい,雲を掴むような名前が多い.或いはITU的には雲を掴むような話をしているつもりが,日本では具体的な投資の対象となっていることによる齟齬なのだろうか.
我が国でNGNというと一般にNTTの推進するNGNを指す.大まかにいうとFTTHを前提にIP網でPSTN網を置き換え,QoSや少額課金,FMC(固定網と移動網との連携)を実現することになっている.NTTがNGNを推進する目的は,光アクセス網を活かした高付加価値サービスを提供し,移動網との連携を強化し,老朽化したISDN交換機で構築されたPSTN網をIPベースで置き換えることがある.
アクセス網の光化に巨費を投じたのに土管屋に終わってしまっては投資を正当化できないとか,固定通信がジリ貧で移動通信に食われているのを少しでもどうにかしたいとか,ISDN交換機の保守部品が手に入りにくくなり交換機の技術者も2007年問題で徐々に引退するとか,NGNへの投資の背景をサプライサイドから眺めると確かに時宜を得ている.
ただNGNの描く世界が具現化するかというと,甚だ心許ない.The Internetとは別にQoSのかかったclosed IP networkでmanaged serviceを提供し,additional chargeを得るというモデルは,電話会社にとっては「夢よもう一度」だけれども,なぜB-ISDNがコケてInternetが成功したかというと,キラーアプリは末端から産まれるからだ.無料のThe Internet上で提供されるサービスより魅力的なキラーアプリを電話会社が提供できるかというと甚だ心許ない.
NGNを煽る人々は「電話の他にキラーアプリが必要」というが,何のために網をつくるのかはっきりしないまま投資しようとしているのだとすれば問題がある.電話にせよ地上波の同時再送信にせよ,既にあるものの焼き直しに過ぎないし,新たな顧客価値を生む訳ではない.無論,これらのサービスをいかに効率的に運用するかは重要だが,運用コストの議論はそれ以上でも以下でもない.
NGNは掛け金というか投資額が大きい分,世のコンサル屋にとってはおいしい商売なのだろう.けれどもインフラに近い技術ほど,それが使われているかどうかユーザーには関係ないし,ユーザーに関係ないということは追加的な費用を払う気もないということだ.であれば機器ベンダのようなB2Bビジネスにとって重要でも,ブロードバンド通信サービス事業者のようなB2Cビジネスにとって重要ではない.
NGNは機器ベンダにとって大きなビジネスチャンスかも知れないが,固定通信事業者のARPUが底を打つほどインパクトを持つかというと疑わしい.かつてISDNやπシステムがADSLの普及を阻害したように,古い酒を新しい革袋に入れることは,少なからずリスクもある.

*1:日本では勝手に4Gと呼んでいる何か