雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

Appleは「あちら側」とどう繋がるのか

Google CEOのEric Schmidt氏がAppleの取締役会に入った.別にGoogleAppleを買った訳でも2社の提携が決まった訳でもないので,先走った分析をすることに躊躇いはある.とはいえ想像力を擽る組み合わせではある.ひとつ推察できることはAppleGoogleの力を必要としており,Googleにとっても悪い話ではなかったということだろう.ではAppleはEric Schmidt氏の取締役会参画によって何を得られるのだろうか.

一貫したユーザー体験の提供

GoogleGoogle Packを通じてWindowsユーザーにリッチクライアントを提供してきた.しかしデスクトップ検索や写真管理など,Google Packの機能の多くはWindows Vistaの基本機能と重複しており,機能性の訴求が難しくなる.Mac OS XiLifeiWorkGoogleとの連携を強めれば,よりシンプルで完成度の高い一貫したユーザー体験を提供できる.

.Macの強化と設備投資リスクの回避

AppleMicrosoftのLive戦略より早くから.Macを提供してきた.とはいえストレージの容量や価格,機能といった面でGoogle, Yahoo!, Microsoftのデットヒートに対し出遅れている.Googleと組み,.MacGoogleベースに組み替えることで,サービスの魅力を高める一方で競争激化に伴う設備投資リスクを回避できる.

サーバー事業・エンタープライズ市場の梃子入れ

AppleXserveMac OS X Serverを提供しているが,成功しているとは言い難い.Intel化によってDellやHP,IBMなどのサーバーとの差別化が難しくなった.ミドルウェアOSS/UNIXベースであることはメリットであると同時にLinux/*BSD/Solarisとの差別化を難しくしている.
Googleの要望を汲んだサーバー・ハードウェアを開発してGoogleに納入すると同時に,検索や分散ストレージ,システム管理などGoogleミドルウェアの一部をMac OS X Serverに組み込むことができれば,Server事業を梃子入れできるのではないか.
Googleアプライアンスエンタープライズ検索市場に参入したものの成功しておらず,Mac OS X Serverを対象にした技術供与に関心を示す可能性は高い.
Eric Schmidt氏はGoogleの前にNovellでCEOをしており,Googleとの連携に限らず,AppleのServer事業を梃子入れし,コンシューマ市場だけでなくエンタープライズ市場でのプレゼンスを高める上で,様々なアイデアを持ち合わせているのではないか.

次世代iPod向けロングテール系サービス

タッチパネルとWiFiを積んだ次世代iPodでは,音楽やビデオクリップの再生だけではなく,様々な双方向サービスが可能となるが,インターフェースが従来のブラウザと大きく異なるため,ブラウズやコンテンツの用意など課題が山積している.Googleと組むことで次世代iPod向けのロングテール系サービスを充実できれば大きなメリットになる.

Steve Jobs氏の後継者育成

AppleはNo.2の育たない会社という.Jobs氏の健康については様々なことがいわれているし,いざという時にリーダーシップを発揮し得る取締役が入ることは,危機管理としても重要なことだ.唯我独尊といわれるGoogleの創業者たちと良好な関係を築けたEric Schmidt氏なら,やはり唯我独尊といわれるSteve Jobs氏に対しても直言すべきことは直言し,後継者の育成へ向けて何か手助けができるかも知れない.

まとめ

想像を逞しくすれば他にも様々なシナジーを考えることができる.しかし冷静にならなければならないのは,現時点で両社が新たな事業提携や資本提携を発表した訳ではないという点だ.両社とも特徴的な企業文化を築いており,本当にWin-Winの関係を築くことができるのか,これから具体的に模索されていくことになるだろう.いくつかの協業を教訓に,両社の距離感について仕切り直しが行われるのではないか.

CUPERTINO, Calif., Aug. 29 /PRNewswire-FirstCall/ -- Apple today announced that Dr. Eric Schmidt, chief executive officer of Google, was elected to Apple's board of directors at their meeting today. Eric also sits on Google's board of directors and Princeton University's board of trustees.