私はなぜ4年たっても会社を辞めないのか
いまの会社に入って先月末で丸4年が経った。石の上にもというし3年くらいは居ようと思ってはいたが,次第に歳をとったせいか4年なんてあっという間だった。昨日,新しい上司と初顔合わせをしたのだが,彼は僕にとって7人目の上司となる。2回の社内異動は自分から望んでのこととはいえ,1年も経たずにころころ上司が変わるのでは評価もへったくりもない。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
- 作者: 城繁幸
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/15
- メディア: 新書
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実際にひとの流動性が高く成果主義に近い世界に身を置いてみると,それはそれで年功序列の世界とは別の矛盾とか不合理があることを知った。仕事の継続性のなさとか,短期的な数字をつくるための刹那的な施策とか,お手盛りのスコアカードとか。成果主義だから優秀なひとが出世するかというとそうでもなくて,英語が達者で立ち回りのうまい奴が出世するのはお約束としても,会社のことを考えて職責を超えて働いたひとが外人に刺されて退職したり,下手に本社とパイプを持って勝手に動くと外人マネージャから疎まれて飛ばされたり,生え抜きで役員以上に上がるのはごくごく少数で執行役員以上はかなりの割合で外からやってくるとか。外から落下傘でやってくるものだから現場を掌握できず,現場を掌握するための管理職ポストを新設して更に情報が流れなくなるとか,それはもう不思議な出来事が目の前で山ほど起こって,こんな下らないオママゴトを続けて会社としては儲かってるんだからオメデタイなぁというのが偽らざる感想。それでも時間の自由がきいて外の人と会う機会もあり,段々と給料が上がっているうちは気楽なものだ。
前の上司からは「若いうちにこんな下らないパワーゲームを覚えてもロクな大人にならないから,そろそろ働くところを考えた方がいいかもねぇ」と勧められた。入社3周年がみえてきてからというもの,実際にいくつか転職話はあったし,この春も転職寸前までいって当の元上司から慰留されたのであるが,新しい上司の仕事ぶりが軌道に乗るまでは抜けるに抜けられないし,社外活動も春ぐらいまでは決まっているし,その後も居場所があるのならしばらくは様子をみて,不満を垂れるだけではなく現状を変える努力でもしてみようかなという気になっている。いつ辞めようか悶々と悩んでいたのが,途中から辞めることはいつだってできるんだから,いつクビになってもいいやという気概を持って,やりたいことを押し通してみればいいんじゃないか,と考えることにした。
閑話休題。城氏が指摘するように,いまの若年層の日本企業での閉塞感が,人口構成と年功序列,経済の成熟にあることは間違いない。いずれにせよ団塊の世代が引退すれば日本でも厭でも今以上に労働流動性が高まるだろう。けれどもそれが何をもたらすか,充分に議論されていない気がする。信頼という社会基盤を失い,多くの人がスコアカードを書き換えるメタゲームに興じたとき,どのような合成の誤謬が起こるのか。ベンチャーとはいえ日本的だった会社を飛び出し,念願の流動性の高い会社に入ってみて,こういうことが日本のあちこちの会社で起こったら,なかなか大変だろうな〜と思案するのである。