雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

近未來通信からの広告売上は没収して被害者救済に充てよ

今日の新聞の社会面で,いよいよ近未來通信を警視庁が捜査することを知った.いまさらの感があるが,総務省が立ち入り検査をした時からの既定路線だろう.そもそも通信事業のコスト構造を知っていれば中継局フランチャイズというビジネスモデル自体がイカれていることに気づくし,広告の文句を仔細に読めば「あー典型的なMLMじゃん」という結論に落ち着く.2chでも早い段階でスレが立っていたではないか.
だから権威ある全国紙がしゃあしゃあと中継局オーナー募集の広告を掲載した時は仰け反った.Skypeを面白おかしく取り上げて「電話がネットで定額制に,無料サービスも登場」といった煽り記事が載り,同じ新聞で近未來通信が「IP電話の中継局オーナー募集」と大々的に広告を打てば,技術の中身や業界事情を知らない市井の読者が騙されても致し方あるまい.近未來通信が初めてではない.多少手口は違えどMTCIやJM-Netといった前例はあった.大新聞が「知らなかった」では済まされまい.広告だけで判然としなくても,ちょっと取材すれば分かる.いまどき大手メディアの広告倫理規程はどうなっているのか.
こういった悪質な詐欺の発生について,通信自由化の代償,具体的には認可制から届け出制への移行による影響とする意見がある.だから,いまさら電電公社による独占体制に逆戻りすべきだろうか.そうすれば確かに詐欺は減るかもしれないが,様々な技術革新の芽や,競争価格の形成まで阻害されてしまう.いちど自由化した後で慌てて規制を強化しても,詐欺師たちは「実はまた規制緩和が企てられてまして」「サーバーを海外に置けば」云々ともっともらしいことをいうから詐欺はなくなるまい.市場メカニズムを通じた事故予防・被害者救済策を考えた方が現実的である.
推察するに多くの詐欺被害者はMTCIや近未來通信を信じたのではなく,彼らが出稿した大手メディアを信じただけではないか.そういった大手メディアは明らかに非合法な事業者からの出稿は拒否するにせよ,グレーゾーンについては審査が甘いのではないか.いまのところ悪質事業者の信用補完に悪用されたとしても,媒体が責任を問われることはない.信用を得たい悪質事業者と,広告料の欲しい大手メディアとで,共犯関係が成立しているのである.
この共犯関係を崩すために,参入規制の強化は必要ない.自前の調査能力を持つ大手メディアが,悪質事業者からの出稿を自発的に拒否すればよいのである.具体的には今回のように自転車操業MLMが摘発された段階で,彼らの過去数年分の出稿について,広告を受け付けたメディアから過去に遡って広告売上を没収し,被害者救済に充てる.こうすれば被害者救済の原資を確保できるだけでなく,メディアが疑わしい広告主を自発的に調査し,広告出稿を受け付けないインセンティブになる.手口を突き止めればメディアは広告出稿を拒否するだけでなく広く報道するだろうから,詐欺の早期摘発・被害最小化にも繋がる.
何か月前まではデカデカと中継局オーナー募集の広告を載せていた新聞が,謝罪もせずにしゃあしゃあと近未來通信への捜査を報じているのを読んで,これは本質的に通信自由化ではなく,メディアのモラルハザードに起因する問題であって,規制を強化せずに再発防止策を組み立てることも難しくないないと感じた.

新聞報道などによれば、捜査容疑は近未來通信が投資家から金を騙し取ったとする詐欺容疑で、4日の午前から警視庁の捜査員による家宅捜索が行なわれている。
近未來通信では、プリペイドカード販売などのIP電話事業のほか、IP電話の「中継局オーナー」として投資募集を行なっていた。総務省が11月27日に実施した立入検査などによれば、2005年7月期の売上高181億円のうち、通信料による売上は3億円にとどまっていた。