雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

FPDチキンレースの成算は

松下が国内に月産100万台のプラズマパネル新工場をつくるという.上場企業が投資する以上は色々と理屈付けされているにせよ,結局シャープの液晶事業と張り合ってるようにもみえる.どちらも4000億円規模の事業で,プラズマの将来に対するアナリストの悲観的な観測を払拭したいこともあるだろうか.技術的にプラズマが有利といわれるコントラスト,色域,残像,サイズいずれの面でも,液晶がコンシューマ市場では充分といえる水準まで追い上げ,部分的に追い越しつつある.
FPDでは液晶・プラズマ問わず各社とも製造コストを追ってチキンレースをしているようにみえる.既に脱落しつつある数社は品質を追ったりニッチ市場の囲い込みに出ているけど.DRAMの教訓では過剰設備に怯んで投資を惜しんだ企業からコストで負けて敗退していった.ただDRAMとFPDで異なるのは,主要メーカーが同時に主要需要家でもある点だ.過剰設備が問題となった場合,市場取引の厚みがあれば生産性の勝負になるが,系列取引の割合が大きい場合は,最終製品のマーケティング能力とかシステム提案能力で差がつく可能性もある.
例えば世界中でISDBが使われれば日本メーカーが優位だが,ブロードバンドもケーブルテレビも来ていない地域でWiMAXを使った双方向テレビとかが流行ると,足周りからシステムを提案できるサムソンが有利になるかも知れない.日本の消費者は目が肥えているのはいいが,豊かで人口が稠密ゆえにインフラが整備されており,ともすると日本でしか売れない過剰品質に陥りがちでもある.世はフルHDブームとはいえ,FPDだって通信容量を確保できなければ解像度はWVGAでいいから安い方が売れるということだってあるかも知れない.
そもそもプラズマが生き残る余地のある50インチ以上の大画面テレビは主要市場が北米で,大型ゆえ輸送コストも馬鹿にならないだろうし,少々品質で劣っても南米あたりに工場をつくった方がコストは安いのではないか.液晶で出遅れた松下がLGフィリップスLCDのフィリップス持分を買収するという下馬評もあるけどどうなったんだっけとか,そういうことも妙に引っかかった.
松下に限らずシャープやS-LCDも随分と掛け金を吊り上げているが,このままではFPD投資競争の熱狂が遅くとも北京五輪以降,際限なき価格競争となって電機メーカーを襲うのではないか.とはいえ投資を止めれば負けが確定してしまうチキンレース故,レースに参加できるということは勝ち通している訳で頼もしい限りだが,そろそろコストと画質以外にどんな競争軸があるかリスクを洗い出す時期が来ている.
というかiLifeで3〜4年前にそういった議論をしていた記憶もあるが,その結果がアクトビラチキンレースだったんだっけか.議論だけなら誰にでもできる訳で,blogでウダウダ論ずるわたしも野次馬でしかない訳だが.

松下が 世界最大のプラズマディスプレイパネル工場を建設すると発表した.
(略)
このニュースで気になる点は、

  1. それほど生産能力を上げても問題ないほど、テレビの買換え需要は大きいのか?
  2. それとも家庭用テレビ以外のマーケット開拓が目的なのか?
  3. 日本に工場を持つ理由は何か?

以上3つ.