雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

問題は3Kではなく

小野さん面白過ぎです。敵いません。ごめんなさい。彼も徹夜とか結構キビシイ仕事をしてることも少なからずあるにしても、このblogにあるのように明るく笑い飛ばせる働きをしているんだろうなぁとか想う訳ですが。そういう楽しさを共有できるだけで、周りは元気を分けてもらえる訳だけどね。
僕も振り返ってみると、別に徹夜が苦だった訳じゃあない。いろいろ躯を酷使したけど、やり甲斐があって、あぁ俺がここにいるから物事が動いてるんだなぁって実感があると、それでだいぶ納得できちゃったりするんだよね。だからそういう楽しさみたいなことを、きっちり後輩に伝えていくことは非常に重要。

ポジティブイメージを突き付けられたN.I.氏は「確かに…楽しくて仕方ないです」と返答。T.M.氏も「3Kの"帰れない"は、もちろん帰りたい人は帰れる。ただ、没頭していると時間を忘れることは実際にある。情熱の問題だ。いい仕事を選んだと思う」と自らの仕事を振り返りつつ、学生に同意した。
(略)
以上、IT業界不人気の理由は? 現役学生が語るそのネガティブイメージを読んでいろいろ考えるところがあったので、改変ネタの形でお送りしました。

まぁ普通にコードを書いたことのある学生だったらバグを追っかけてたら朝になったとか日常茶飯事であって、その楽しさは教えるまでもないのだろう。3Kなり7Kが問題となるのは、無理に値する仕事が降ってくるかという点にあるのではないか。自分の能力を限界まで活かすような働き方、俺がいたから動いたぞ的な自己満足があれば納得できても、コードひとつ書けないどころかプロトコルのイロハも理解していない元請けのアホSEに振り回されて時間の8割を無駄にするとか、そこから何も学びようのないくらい腐ったコードのメンテナンスを担当させられてスレッドセーフなコードひとつ書けない先輩から小突かれるとか、そうやって若者は腐っていくんじゃなかろうか。
だいたい学生時代にプログラミングを勉強していなくてもキャッチアップできるような職場って、裏を返せば本当のプログラマと巡り会える確率って小さいよね。そんな環境に本当のプログラマが行こうとするだろうか。ソフトウェア業界の重鎮たちが就職した30年ちょっと前にはパソコンなんかなかったから、確かに地頭のいい学生を採ってOJTで教えれば良かったのかも知れない。否、話を聞く限りはあの時代こそコンピュータ工学を勉強した学生を採っていたとも聞く。いまや誰だって子どもの頃からパソコンを触っているのであって、プログラミングに向いた奴はとうの昔に頭角を現しているはずであって、大学卒業までにプログラミングに触れなかった奴が、会社に入ってからメキメキ上達して、というご時世ではないだろう。裏を返せば学生にプログラミング能力を求めないということは、そこにはきっと本当のプログラミングを必要とする仕事がないのだろう。
僕がSEの足を洗ったのは3K、7Kそのものが嫌だったからではなく、それが自分の人生も、世の中も変えず、ただ理不尽な産業構造の結果に過ぎないと思い至ってからだ。努力が報いられる見込みを見いだせなかったからこそ、自分自身で未来を切り開くための余裕をつくる必要に駆られた。もちろんIT業界がいずれ3K、7Kは例外的といえるくらい近代的な産業に脱皮すべきことはいうまでもない。けれども今すぐ学生に対して示すべきは、現場から目を背けた3K、7Kの曖昧な否定ではなくて、全力投球に値するユメと価値のある仕事だということだ。
多くの人にとって今どき銀行の勘定系よりは、mixiニコニコ動画の方が世の中を動かしているようにみえているのではないか。いつの時代もIT産業の雇用を吸収しているのは派手目な消費者向けサービスではなく、粛々と動く縁の下の力持ち的なシステムであって、そういうものを構築する魅力をどう訴求できるかが重要な訳だが。

Wiiをみても、ニコ動をみてもでもいいのだが?面白くないはずがないじゃないか」一方で、世の中にごまんとプログラマが居る中で、ニコ動を開発したのはたった1人だという現実も忘れてはいけないと思う。

蛇足になるが僕はもともと電子マネーをやっていたこともあって決済関係のシステムには強い興味があったが、希望して銀行関連のシステム構築に飛び込み、けれども彼らの威張り方や理屈もへったくりもないゴリ押しに嫌気がさして二度と金融SEはやらないと誓ってSE自体から足を洗った。
若者を辟易させるのは3K、7Kといった労働環境もさることながら、彼らが空気のように当たり前と感じている業界慣行の理不尽にもある気がする。彼らはエンジニアに逃げ場のない時代から明確な上下関係で仕事をしていることもあって、平成のご時世に信じられないくらい、本当に傲慢かつ無知だった。僕がたまたま悪い案件に当たっただけかも知れないが。
同じ金融でも証券系とか、インフラでも電話系ではなくインターネットやWebの世界になると、もうちょっと互いに選択肢があった上で一緒に仕事をしている前提もあって、かなりリベラルかつリーズナブルな世界がある。というか自分の場合はそういうのに慣れていたから、旧態然とした下請けいじめ的な世界に直面してカルチャーショックを受けたということもある。最初に飛び込んだ業界がそうだったら、世の中とはそういうものだ、仕事とはそういうものだと刷り込まれたのかもね。
何が若者を遠ざけているか、人材不足に悩む人々はもうちょっと真剣に我を顧みた方がいいのではないか。同じIT業界かつ3K7Kな労働環境を否定できない世界であっても、リーズナブルかつユメさえあれば、人材募集に苦労しているようにはみえない。社会とか業界構造、若者気質に人材不足の原因を求めている連中こそ、足下で自分たちが抱えている理不尽や行き詰まりから目を背けているようにもみえるのだが。