雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

著作権進化論 - 本当の大乱闘はこれから始まる

著作権分科会の「法制問題小委員会中間まとめ」「私的録音録画小委員会中間整理」について、パブコメ締め切りが来週いっぱいに迫っている。興味のある方はMIAUパブコメ・ジェネレータとでも相談しながらパブコメを出すかどうか検討しては如何だろう、とでも書こうと思って自分も試してみたんだが、これかなりダウンロード違法化反対派の誘導尋問っぽくね?正直、新聞各紙の世論調査より悪質げ。もうちっとリベラルな展開を期待してたんだがなぁ。

文化庁パブリックコメント締切まで、あと1週間を切りました。
本日、MIAU開発プロジェクトにて進められておりました「パブコメジェネレータ」を、ベータ版ではありますが、公開いたします。これは、用意された簡単な質問に答えるだけで、パブリックコメントに意見として出すことをお薦めする意見の概要を、自動的に作成するものです。どうぞご活用下さい。

βだから週末にでも直ると良いのだが。意見の方向が画一的な元データもさることながら、Yesと答えた項目についてのみMIAUの意見を挿入するという仕組みそのものに問題がある気がする。まあ今回は締め切りに間に合うようはやめのリリース、しょっちゅうリリースということで、これから群衆の叡智による飛躍的な改善が望まれるところ。
という話はさておき知っている人は知っての通り、パブコメというのは大体において儀式であって、ちょっとした集団的意思表明とかパブリシティとしての政治的意味はあるけれども、大勢は変わらないんじゃねーの。意識を高めるみたいな点で自分でパブコメを認めるのは意味あることだとは思うけれども、それで政治参画した気になったんじゃあガス抜きもいいところですわ。いずれにしても今回の議論が法制化されようがされまいが、本当の大乱闘はこれから始まる。
今回のパブコメ「法制問題小委員会中間まとめ」の方が検索エンジンの合法化とかオークションサイトでの著作権の在り方とか、結構重要なことを当たり前に論じていて、議論を呼んでいる「私的録音録画小委員会中間整理」については何かゴニョゴニョ持って回った言い方をしてるけど、要は権利者からヤイノヤイノいわれて面倒だから何か問題を解こうとしているフリをしているだけにしかみえない。
ダウンロード違法化にしても、罰則がない上に捕捉や執行も現実には難しい以上、見せしめ的な検挙が懸念されるとはいえ実質的には権利者の顔を立てつつ空回りするよう配慮された官僚的作文ではないか。細かい技術的な話をすると、ダウンロードを違法化できない前提で送信可能化権という概念が生まれた経緯との整合性をどうするとか、「情を知って」をどう条文化するのかとか、そういう法技術的なところで突っ込みどころ満載だし、個人的にもどちらかといえば反対ではあるのだが、社会的影響力を鑑みるにso what?ではある。
ところでYoutubeニコニコ動画が年内にもユーザー投稿動画についてJASRACと暫定合意を目指しているそうだが、これは素晴らしいことだ。事業者たるものコンテンツの権利に対して敬意を示すべきだし、権利者だって時代の変化に対応しながら柔軟に回収モデルを再構築していく必要はある。
一方で疑問なのは、購入された楽曲がはっきりしているiTMS著作権利用料の分配でさえ混乱しているJASRACが、投稿動画に含まれる楽曲を捕捉して個別に著作権利用料を計算して公正な配分をできるのかということだ。動画共有サイト著作権料の支払いと合わせて、支払った著作権利用料がどう分配されたかについて権利者団体に明細を求めるべきではないか。
既存の権利者団体がフェアな利用料配分をできないのであれば、動画共有サイトそのものも著作権管理事業団体となって直接的に収益配分を行うとか、様々な枠組みや機会提供を通じてコンテンツの配布だけでなくアーティストの登龍門を提供してもいい。ケータイ小説がベストセラーになるご時世だから、ニコニコ動画からミリオンセラーが出ないはずがないではないか。
だいたい大手レコードレーベルが若手のプロデューサーもアーティストも昔のようには抱えなくなって久しい。誰もが最初はインディーズなのであって、インディーズ時代に食える枠組みを提供し、メジャーになってからもその仕組みに乗ってもらえばいいではないか。世代交代を経て自然と旧い著作権管理の枠組みは解消されていくか、スルーされる前に透明性を高めて若いアーティストを育てる方向へと改革せざるを得まい。
ネットと著作権との関係について長い目でみて本当に考える必要があるのは、誰が本当の意味で著作者の味方か、どういった仕組みをつくれば本当に創造が促され、クリエイターが報われるかということではないか。いまは過渡期ではあるけれども、いずれネットネイティブなクリエイターが増えてきた時に、彼らが自分たちを育んだ豊穣な世界に唾するだろうか。声高に権利を主張する団体は、本当に権利者の考えを代弁しているのか、そして権利者は本当にクリエイターの声を代弁しているのか、きっちりクリエイターを育成しているのか。
本当に著作権制度を大きく動かそうとするのなら「権利者」対「消費者」という対立軸は政治的に不毛だ。むしろネットによる著作権概念の進歩は、「創作者」を育みエンパワーする枠組みをネットが提供し、最も先進的なインターネット・ユーザーたる「創作者」が、権利者を僭称して中間搾取に勤しみ後進を育成しない抵抗勢力から権利を奪還する構図であるべきではないか。
結局のところ法律なんか現実の後追いしかできないし、いくら作文したところで執行を伴わなければ意味がない。役所に似たような紙礫を投げつけるよりも、楽しくインディーズサイトをみっくみくにしていることの方が、長い目で見ると大きく歴史を動かしているのかもねー、とか思うと、この大きな潮流を踏まえて、僕は何処で何をしているべきだろうかとか考えさせられる。

インディーズ音楽専門のmuzieに行ってみたところ、なんとダウンロード数のランキング上位が初音ミクだらけ。これはすごい。