雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ニッポンのSEよ、蜂起せよ

なんかはてブってば情報サービス産業の悲惨さを訴えると急速にブクマが伸びるものらしく、お前らダラダラ職場からブクマチェックしないで、とっとと帰れよと思うこともあるが、きっと帰れない深い事情もあるのだろう。
しかし分かってないなあ。10兆円台に乗せた情報サービス産業にあって、経済産業省のIT関連予算ってイマドキ400億円もなくて、これって腐りきった社保庁システムの年間保守費用より小さいんだぜ。それが日本のIT業界発展を阻害しているなんて過大評価じゃね。

日本のSI業界の過酷な労働条件を改善したければ、やるべきことは労基法の改正とかじゃなくて、市場メカニズムを正しく機能させることだ。日本のIT業界を発展させたければ、援助交際をやめて何もしないことだ。

最近こそ郵政4分割とか、自民党参院選対策で大見栄を切った年金の名寄せとか、政治に皺寄せされた不条理なデスマ案件が散見されるけれども、官公需って昔からユルくて高コストだったり、教条的に人月100万円くらいまでしか認められなくって優秀な技術者を突っ込むには水増し請求するしかなかったり、2年ごとの人事異動で市場ニーズも技術もさっぱり分かっていない役人がベンダ任せで発注するものだから、とりあえずつくったものの誰も使わないシステムばかりだったり、確かに問題山積ではあるけれども、それって過酷な労働条件の原因か。業務の過酷さという意味では民間の金融とかの方がよっぽど悲惨なことになっているし。
原因は人月商法だとか重層的な下請け構造だとかホワイトカラーの生産性が云々とかいわれているけれども、最後の最後のところで、そういった不条理を受け入れているのは、過酷な労働条件に耐えて働き続け、気づいたら自分が労働市場で通用しなくなっていることを知って、搾取する側に回れるように死ぬ気で踏ん張るか、身につけた技術が時代遅れになって襤褸切れのように捨てられるまで不条理に気付かない技術者自身ではなかろうか。
この傾向って日本の文化や職業倫理の深い深いところに根付いていて、例えば経営の厳しい中小企業にまでワークバランスを押し付けようとする厚生労働官僚までが、自分は国会待機でプライベートをズタズタにされて、メンヘルの危機に曝されても「国家公務員は労働基準法埒外だから」と納得しているくらい根深いのである。これって究極の紺屋の白袴というか「隗より始めよ」と思うけどね。
僕は労働時間なんて結局のところ自分で決めればいいと思っている。前のめりに成果を求めるもよし、家庭を大事にして労働者の権利を声高に主張するもよし。けど誰もが会社のいいなりになって過酷な労働に耐え続けるのって、囚人のジレンマだよね結局。誰もが過酷な労働条件を拒否すれば、自然と慣行は改まるんだよ。みんな自分が仕事しすぎるせいで、人月あたりの期待生産性を高めに見積もられて損していることに気付かない。これって例えば見積もりを人時あたりにブレークダウンするだけで改善しそうな気もするけど。
それでも年功序列・終身雇用の時代なら襤褸切れになってからも一生カイシャが面倒みてくれたんだろうが、今はそんなことない。だいたい乗っかれる若者の数が減っているし、オフショアの連中に日本的な根性論が通用する訳ないんだから。だから過酷な労働条件に耐え続けることのモトをどう取るかは、あなた方ひとりひとりが考えなくてはならない。あなたがそうやって耐えていること自体が、この古臭い業界慣行を生き永らえさせているのだという罪悪感を感じながら、俺はこの努力について、どうやって元を取るのかと自問するのだ。それでも割に合うなら踏ん張ればいい。割に合わないなら賃上げを要求するなり、労働基準監督署に泣きつくなり、割に合う職場をみつけて転職すればいい。
度々はてブ上位にくるSE哀史を読んで溜飲を下す暇があったら、技術者を大切にしない会社から逃げ出す準備をするか、労働に見合う対価を得る仕組みを考えるべきだ。今すぐそれが無理なら、そうやって跳べるよう力を蓄える方法を考えるべきだ。あなたがIT業界で過酷な労働条件にあるとしたら、霞が関不夜城でやはり過酷な労働条件に晒されているキャリア官僚諸氏のせいではなく、その条件に甘んじ働き続けているあなた自身も共犯者ではないか。いずれ搾取する側にまわれるという根拠なき期待も、役所なり会社のせいにして被害者意識に浸れる共依存の関係も、とうの昔に崩れているのだから。