雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

木屋町の夜も更けて

昨日は国際会議の懇親会からホテルに戻ると10時過ぎだった。飲み直そうとタクシーで木屋町に向かい、一昨日ストリートミュージシャンと遇ったところを通ったが誰もおらず、高瀬川を渡って猥雑な街をぶらぶらし、路で客引きしている若く無垢な感じのおねえちゃんが、ひとりでやっているというバーに入った。
店のカウンターには数人分の椅子しかなく、いかがわしい赤っぽい照明をみて少し心配になったがARDBEGのショットと野菜スティックを注文した。キッチンが貧弱な割にメニューが充実しているなと訝しんだら野菜スティックを頼むと別の店に電話をしている。この店は曜日によって別の女の子がやっていて、その子は火曜日に来ているのだという。まだ22になったばかり、接客が好きで普段は東海道新幹線で売り子をやったり土日は接客態度に厳しいホテルのレストランでも働いているとか。「親はフリーターでふらふら色んな仕事を掛け持ちする私のこと心配しているけど、わたしなりに世界を広げて、自分の得意分野を深掘りしてるんだよー」って、屈託なく笑う。
夜の仕事は今年に入ってからで「普通、夜の仕事って時給1000円以上なんでしょうけれど、この店は見ての通りマッタリしているから。けど、いろんな話を聞けるので、毎週この仕事を楽しみにしている」って、いったい時給いくらで働いているんだ? 奥まったところにある店だし、誰も客がいないときは通りに出て客引きをしているのだそうだ。
しばらく飲んでいると、最近、大阪の不動産屋に転職したという常連さんがやってきた。このところ京都でも建物の着工件数が激減しているというので、構造計算の新しい計算方式に対応したソフトがなくて建築確認が滞っている件かと思いきや、この10月に京都の景観規制が更に厳しくなり、その影響が大きいという。着工件数の激減は米国のサブプライムなどよりもよほど日本の実体経済に影響を与えている気がするのだが、あまり新聞で大きく取り沙汰されず、たまに中程の面でベタ記事が出るくらいだ。役所や政界では大騒ぎになっていると風の噂で聞くので、マスコミが景気に冷や水を浴びせぬよう遠慮しているのかも知れない。
東京で株屋をしていたこともある彼は、東京人は経済の話をするが、大阪人は経営の話をしたがるという。いちばん商売をやりやすいのは福岡、名古屋は好景気だが人間関係に深入りするまでは排他的だとか。僕も酔うと天下国家ばかり議論したがるところが、典型的な東京人なのだろう。やれ生産性とか、産業構造とか、法体系とか、それが自分に何の関係があるというのか。結局のところ問題はゼニの流れじゃないか。迂遠な議論をした方がカッコ良いとか、何か物事を真剣に考えているようにみえると思ったら、とんでもない勘違いだ。貴様に何ができるというのか。とんだ自己満足じゃないか。
昨日はタクシーの運転手から「木屋町は危なくて祇園の方が安全」とか脅されたのだが、不動産屋氏によると木屋町でもキャバクラはともかくバーやガールズバーでのぼったくりは皆無という。最初はびくびく飲んでいたこの店も、普通にチャージ500円のバーだった。アイラの品揃えや照明に不満もあるが、接客も客筋も悪くない。
翌日も朝が早いので深夜1時過ぎタクシーでホテルに戻ったら、前のエントリに結構なブクマがついていた。どうして件のストリートアーティストのblogを紹介しないのかという指摘もあったのだが、正直、引用してトラバを貼るかどうかは悩んだ。
僕が彼女からCDを買ったコンテクストが、彼女の音楽性とかと掛け離れたところにあると感じられては幻滅されるかも知れないとも思ったし、却ってご迷惑がかかってもいけないなとも逡巡し、結局リンクを張るのは止めた。音楽や詩そのものについて何か書けることがあったら、そのうちリンクを張るかも知れない。