出会い系サイトって何?
いわゆる出会い系サイトへの未成年によるアクセスを制限することの必要を認めるに吝かではないが、何を以て出会い系と定義するかが難しい。例えばmixiやモバゲータウンって出会い系サイトなの?みたいな。CGMとかソーシャルサービスを軒並み網にかけるとなると、際限がないよなぁって。
インターネット上の出会い系サイトに絡む児童(18歳未満)の被害増加を受け、警察庁は17日、サイト事業者に対し、都道府県公安委員会への届け出や児童に関する書き込みの削除を義務付ける方針を固めた。年齢の確認方法も強化し、違反した場合は、罰則や行政処分の対象とする。
携帯コンテンツの黎明期だからかれこれ8年ちょっと前になるが、手伝っていた学生ベンチャーが簡易ホームページ作成サービスをやっていた。別に出会い系サイトでも、ましてや援助交際サイトでもない、今風にいえば普通のCGMサイトだ。それで最も大変なのが援助交際絡みのコンテンツの削除。消しても消しても追いつかない。
消す度にそれを引っかけるためのキーワード辞書をつくり、そもそも書き込みを受け付けないようにするのだが、敵も然る者というか次々と引っかからない隠語を発明してくる。だいたい出会い系サイトとかが蔓延する前だったこともあって、すごい勢いで書き込まれる。
これをユーザーサポートのアルバイトを雇って監視しては消していく訳だが、気付かぬうちにアルバイトとユーザーが出会って結婚してしまったりとか、もう何だかなぁという状況。人間って出会うようにできてるんですわ、別に出会い系サイトとしてつくらなくってもね。街でもカフェでもバーでも、何でもいいんだ。
という訳で削除義務について、黎明期で利用者が数万人しかいなくても監視が大変だったのに、今時のモバゲータウンやmixiのような1000万人規模の化け物サービスで、いったい何人の監視員を雇う必要があるのか、気が遠くなってしまう。通報ベースの個別対応でも、馬鹿にならないコストがかかるんだろう。閑話休題。
人間ってネットや携帯ができる前から、出会うところで出会って、やることやっていた訳で、メディアの進化によって相手を選ぶときの選択肢は大きく広がったんだろうけれども、メディアを叩いたって大した効果は期待できまい。とはいえ戦前のそういうカフェだって摘発されて営業停止処分を受けたようだから、歴史は繰り返すって奴か。そうやって、叩かれて、叩かれて、それでも出会おうとする、出会わせようとする人間の煩悩と、それを取り締まろうとする側とのギリギリの鬩ぎ合いが、サービスの細分化と精緻化を促し、日本の多様な性文化を涵養しているのではなかろうか。その辺の匙加減は警察がお手のものだろうから、実は密かに期待している。
とはいえ出会い系サイトの定義を幅広に取られて、携帯コンテンツから軒並みソーシャル機能が排除されるようなことがあれば、それって明らかに諸外国よりも洗練されている日本の携帯コンテンツサービスの進化に歪みを与えてしまうだろうなという心配もある。まぁ報告書を読んでみないことには何ともいえないし、僕の懸念が杞憂であることを祈ってるんですけどね。
これはちょっと愚痴になるが、コンテンツ規制の問題はモバゲータウンで出会った女子高生が殺された事件が起きた時の、彼らのリスク・コミュニケーションが悪くて拗れた感もある。これは余計なお世話だが、勝手に出会ったのだとはいえ人が亡くなった時に過失がなくとも絶対に「うちは悪くありません」的な態度は取ってはいけない。「ごめんなさい」というのも過失を認めたことになるので法的リスクがあるが、ここは眉間に皺を寄せ、頭を深々と下げて「残念です。事業者として誠に遺憾で、再発防止に全力を尽くします」というべきだったのだ。無論フリだけじゃなくて、それから粛々と約束したことに取り組む必要があることはいうまでもない。
携帯コンテンツ規制がこれからどうなるか分からないが、どの事業者でも似たような問題が起こるリスクがある以上、そういった企業の役員以上は関係者や関係省庁への説明やプレス対応に備えて、今からでも遅くはないのでメディア・トレーニングを受けておくべきだろう。いきなり糾弾されてパニックになる気持ちも分かるが、ここは日本なのだから、少なくとも空気を読めるフリくらいは覚えておく必要がある。良かれ悪しかれ、備えあれば憂いなしではないか。