雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

Vocaloidと声紋人格権

Vocaloidが道具や楽器だという擬制vocaloidに歌わせた場合の著作隣接権を整理する上で有用だけど、じゃあ道具なんだから何を歌わせても利用者の勝手なのか。少なくともサンプリングされた声優の人格権に配慮した権利制限は認めるべきじゃないか。いまは初音ミク初音ミクだけど、そのうち元の声優さんと違いが分からないくらい精度の高いvocaloidが出て、人格を疑われるような歌を謡ってたら、やっぱまずいんじゃん。

VOCALOIDを用いて楽曲を制作する場合、「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」に記載されております通り、公序良俗に反する歌詞を含む合成音声を公開または配布することを禁じております。

たとえば料理に毒を入れて売るのは禁じられているけど、それを禁じるのは断じて包丁屋の仕事じゃない。我々は道具にさえ萌えられる生き物ではあるけれど、しかし道具への愛着に基づいて、道具屋が利用者に利用法に制限をかけるのは、それがどんな道具であれ間違っている。

顔とかについては今も肖像権というのがあるけれども、声紋のサンプリングが簡単に再利用できるようになると、恐らく声紋人格権の保護も非常に重要な問題となってくるだろう。初音ミクのように声優がちゃんと収録している場合だけでなく、曲とか講演からサンプリングして好きに謡わせられるようになるかも知れないし。AVからサンプリングして阿久女イクっぽいソフトなら今だって簡単につくれそうな訳で。
自分の声を勝手に騙られない権利というのは人格権として認められていて、vocaloidのサンプリングは契約に基づいて特定条件での利用を許諾するという整理となるのだろう。だから卑猥な曲を歌わせることを禁じることも、本人を騙って対話や契約行為を行うことを禁ずること等も声優の人格権として認めるべきだし、vocaloidの発売元はかかる権利を尊重した利用許諾契約を用意すべきだ。それはVocaloidエンジンが商用かオープンソースかに関わらず同じように必要となるだろう。あまり厳しく権利を認めると、サンプリングとかマッシュアップまで駄目になりそうで微妙だけれども。
そういった声紋人格権を認めた場合に、ラディカルに自分のサンプリング音声を何に利用しても構わないってオープン化するキャラは出てくるんだろうか。初音ミクの声色を真似して卑猥な曲を歌う雌豚閣下*1とか、自分のデートを濡れ場まで洗いざらい書いて二股かけ損ねた相手に逆ギレするid:hashigotan*2みたいなブロガーも出てくる時代だから、そんなユニークなキャラが出てこないとも限らない。というか期待したい。
声紋をオープンに公開して、誰もが自分になりすませる環境を整えれば、実際に自分がやった悪事まで偽だと言い張ってごまかせる可能性がある。すごく社会は混乱しそうだけれども、それはそれでひとつの戦略だ。とはいえ少なくとも僕は、自分の声で思ってもいないような語りを誰かが勝手にpodcastするとか、自分の声で卑猥な曲を謡った動画がニコ動にアップされたりすれば、深刻なアイデンティティの危機に陥りそうな気がする。それとも慣れたら意外と平気なのかな。

*1:これは恐らく初音ミクの使用許諾契約違反にも、声紋人格権の侵害にも当たらないんだろうな。どこか割り切れないというか、微妙かつ複雑な問題という気もするけれども。あまりに酷い場合はモノマネと一緒で名誉毀損で訴える余地はあるのかな。裁判で勝てるかは謎だけど。

*2:いま未成年フィルタリング義務化の議論が盛んだけれども、こういうblogのせいではてな全体がアダルトサイトに分類されてしまうと残念だし、かといって商売系のアダルトblogでもないからエッチな内容だからといって削除してしまうのも勿体ないし、どうすべきなんでしょうね。エントリ毎にPICSヘッダをカスタマイズできるようにして、利用者なり運営者が正しくPICS属性を設定できるようにして、保護者や組織が必要に応じて個別にフィルタリングできるようにすればいいのかな。はてブのラベル機能と連携させても面白そう。ということでidea:18731を投稿。