雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

たぶん善玉ウイルスは引き続き合法

個人的にはウイルス作成罪は、共謀罪と切り離して高木先生の指摘を盛り込んだかたちで、早期成立を図るべきだと考えている。Antinnyのようなソフトの開発・頒布を、著作権法ではない法律で罰せられる法整備は必要だし、かかる刑法改正の弊害もみつけかねているからだ。
善玉ウイルスの作者が嘆いているが「ウイルス作成罪」という言葉に引っ張られて批判する前に、条文をよく読んだ方がいい。この善玉ウイルス事案の場合、まずウイルス駆除が「電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」という定義に当たるか微妙である。PCの持ち主である企業のシステム管理部門が、ウイルス駆除を企図して作成しているからだ。また仮にウイルスの定義に含められた場合も、刑法三十五条で定められた正当業務行為に当たると考えられ違法性阻却される公算が高い。
ところで法律とか特許の日本語って、解釈の一意性を高めるための工夫や論理構成のせいで読み辛いよね。勘所を掴めばプログラマにとって読みやすい場合もあるんだけど。いっそ自然言語は諦めてPrologみたいな法律DSLをつくって欲しい。法律だけでなく条約や契約書にも使えればなおよし。気になったことを弁護士と相談しても、竹を割ったような答えをもらったことないしなぁ。

私は情報管理部にアイデアを発案した。「新しいウイルスを作ってわざと感染させよう。今、悪さをしているウイルスを駆逐する善玉ウイルスを!」発案は実行を許された。
悪いウイルスを解剖し、その感染方法をつきとめ、ピンポイントにその手段を奪い去るように、大元のウイルスの亜種である新しいウイルス、無害なウイルスを作成し、全社のパソコンにばらまいたのだ。無論、他の会社に感染するようなことはないように慎重に手配した。かくしてウイルスは撃退された。
今後の国会の動き次第では上記のようなことをすれば法にふれることになりそうだ。きわめておかしな時代になる。文官は技術者の良心を冷たい石の中に封じてしまうのだ。

いずれにせよ、立案の本来の意図が、大林宏刑事局長が2005年7月に国会で答弁した通りに、「電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせないか、またはその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える状態にする目的を犯人が有している」場合に限定しているつもりであるなら、そのように法文を直すべきだと思う。――(B)

(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録