雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ネットで子どもの安全を守る包括的な政策パッケージ私案

僕はそもそも有害コンテンツ規制、特にフィルタリングの必要性や有効性に疑念を感じるが、ネットをツールとして使った少年が被害者となるいじめや犯罪が後を絶たず、保護者や教育者から悲鳴が上がっている以上は、政府として何かしなければならないという前提を受け入れるとして、どんな政策であれば法的安定性が高く、実効性・透明性を担保でき、政府機関の肥大化を防げるか考えてみた。

保護法益と政策目標を明確化して政策評価の枠組みを構築する

青少年の自殺を防ぐ、学校内のいじめを見える化する、青少年を対象とした犯罪を防ぐ、といった具合で具体的な保護法益や政策目標を明確にして評価指標をつくる。かかる指標を追跡調査できるよう、犯罪白書での調査項目など必要に応じて見直しを図る。

有害コンテンツを廃止して違法コンテンツの範囲拡大を図る

普通の利用者には違法と有害の区別などつかないので、本当に規制の必要なコンテンツは違法化し、合法有害コンテンツというカテゴリは廃止する。例えば自殺サイトを規制するならば、実際に自殺者を出した自殺サイト運営者を自殺幇助罪で検挙する。児童買春を仲介するサイトの運営は、児童ポルノ法違反幇助で検挙する。仮に現行法で難しければ、早急な法改正を図る。

サイバー犯罪の窓口機関を機能強化して民間事業者の参入を推進する

現在は違法情報は各県の県警本部、有害情報はインターネット・ホットラインセンターが窓口となっているが、利用者からみて違法・有害の区別がつきにくい他、ネットでは県をまたいだ利用が多く、サーバーの所在地を確認することは難しい。そこで違法コンテンツ、フィッシング詐欺、ウイルスなどあらゆるサイバー犯罪に対応できるワンストップサービスを実現する。
窓口機関の業務負担が増えることが懸念されるが、サイバー犯罪窓口機関業務法を策定し、公的サービスよりも高いサービス水準を望む利用者は、受益者負担で迅速なサイバー犯罪からの救済サービスを受けられるようにする。窓口機関を強化することで警察組織の抜本的な改組を待たず違法コンテンツ、フィッシング詐欺、ウイルス等のサイバー犯罪に対するワンストップサービスを実現できる。既にサイバー犯罪について顧客から相談を受ける機会の多い、ISPやセキュリティベンダ、SIerなどが窓口機関業務に参入することが見込まれる。

違法コンテンツへのアクセスに届出制を導入する

現行制度ではホットラインセンターからの削除要請をISPや海外サイトが聞かない場合、通報が行われても事態を改善することが難しいが、窓口機関がラベルビューロを運営し、端末メーカーや通信事業者、フィルタリング・ベンダ等と連携することで、国内で出荷される携帯電話やPCでは既知の違法サイトを標準設定で表示できないようにする。
違法情報のURLデータベースは公開し、違法コンテンツへのアクセスは届出制とし、届出の行われた正当な業務目的での違法コンテンツ閲覧は正当業務行為として違法性阻却する。届出のない興味本位での違法コンテンツ閲覧は、技術的に防ぐのではなく違法化して刑事罰を科す。

ネット安全利用技術の評価手法を確立し有効な技術を推奨する

フィルタリング技術そのものは民主導で開発すべきだが、実現すべき機能や品質検証の一部を政府で行うことが考えられる。具体的にはフィルタリング・エンジンの中立的なベンチマーキング技術等を開発し、CRYPTORECのように有効なフィルタリング技術・ゾーニング技術を政府が認定する。サイバー犯罪の実態に鑑み、基準の改定と認定は数年おきに見直す。

本人確認サービスを制度化し年齢属性証明の普及を図る

電子署名及び認証業務に関する法律」を改正し、電子署名・電子認証局だけでなく、Open-IDの認証プロバイダ等も視野に入れた法律に衣替えして、自治体、携帯電話事業者、ISP、金融機関といった本人確認機能を持つ事業者は本人認証サービスや年齢属性証明サービスを提供できるようにする。SNSサイト等が本人確認機能を持つ認証サービスや属性証明サービスを使わずに未成年の利用者を受け入れ、そこで刑事事件が起きた場合には管理責任を問うことで、コンテンツ事業者の自発的な属性証明サービス対応を促す。

学校公式サイトとネットいじめ110番を開設する

学校裏サイトの多くは実際には子供たちの情報交換のための掲示板に過ぎず、それらが教師のみえないところにあることが問題である。だから全ての学校で学校公式サイトを立ち上げ、犯罪者による子供へのコンタクトを防ぎ、ネット上での子供たちの関係に教師も参加できるようにする。また学校公式サイト等でのトラブル解決へ向けて教員の情報リテラシーが高くないことに鑑み、トラブル解決のための専門家を擁するネットいじめ110番を開設する。

児童を受け入れるサイトの安全基準を策定する

児童を受け入れるサイトについて、本人認証サービスの利用やゾーニングへの対応、ネットいじめ110番対応窓口の設置、見知らぬ大人から子どもへのコンタクト制限、ネット犯罪に対する捜査協力など必要な安全基準を策定する。児童が被害者となるネット犯罪の実情に合わせて、安全基準は数年おきに見直す。安全基準を満たしたサイト上で犯罪が生じた場合には民事・刑事上の管理責任を免ずる。

コメント求む

いまの民主党案・自民党案と比べて厳しい内容を含むが、北欧の事情などを考えるといずれ浮上する政策課題だし、有害コンテンツ規制法案、出会い系サイト規制法改正案、児童ポルノ法改正案の立法主旨を踏まえ、保護法益を明確にして、犯罪予防の実効性を担保しつつ透明性を確保し、政府機関の肥大化を防ぐ方向で検討してみた。
過激な規制強化を含む内容で様々な課題もあるが、あくまで事件→規制強化というループを断ち切るべく、叩き台として高めのボールを投げたつもりなので、是非コメントをいただきたい。

法案みせてもらいました。
児童ポルノとか違法情報を媒介している人の責任が決まらないのに、合法有害情報を定義して、それを媒介している人の責任を議論しようとしているのですから、決まるわけがない。