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いじめられっ子だった俺が断言する ネットいじめは有害情報規制じゃ解決しない理由

おいらの妄想じゃ国会議員さん達って厳しい選挙を勝ち抜いた選良で、僕ら庶民よりずっと人間の機微を知り抜いていそうな気がするんですが、実際どうなんですかねぇ。なんてことを考えさせられたのは、与野党とも有害情報については似たような定義をしていて、実に純朴っつーか単純で直情的と感じたから。

有害情報の種類 性質 フィルタリングとの相性
猥褻・残虐 先験的に定義が可能 ほぼ機械的にフィルタリング可能
非行・犯罪の誘発 事後的に検証が可能 部分的にフィルタリング可能だが精度は低い
ネットいじめ 被害児童の主観 フィルタリング不能かつ問題解決にならず

という訳で現実問題として、技術的にフィルタリングが有効なのは猥褻・残虐な情報に限られるし、この辺は立法化しなくとも親の判断によるフィルタリングソフト導入で間に合っているし、犯罪を引き起こしている訳じゃないので緊急性も低い。一方で与野党とも公表されている案では非行・犯罪の誘発やネットいじめに対して抜本的な対策となっていないことが問題だ。
たぶん非行・犯罪の誘発やねっといじめが問題として深刻だけど、フィルタリングじゃ問題は解決しない。だいたい素晴らしいペースで青少年達は隠語をつくるんで、大人がNGキーワード集をメンテしても追いつかないことは、ちょっとしたコミュニティ・サイトの運営者なら心得ている筈だ。それに非行・犯罪の誘発やネットいじめって問題の本質は情報ではなく高度なコンテクストを持つコミュニケーションであって、極論すればシカトってどうやってフィルタリングするんですかとか、Web丸ごとフィルタリングしたってメールさえ使えれば問題ない訳で。GSM圏のSMSがどう使われているか調べてみれば良い。実は日本のようにWebが使われているって裏を返せば大人による介入が楽なのであって、これをフィルタリングして下手に闇に隠られるよりは、問題行動を全て便利なSNSに集めて効率的に監視した方が問題行動を効率的に減らせるはずだ。
あとネットいじめっていうけれど、いつの時代もリアルのいじめに対してさえ教師が抑え切れていない場合が多いというか、教師が関与すれば問題解決するというものでもない。まあネットでいじめが展開することで、これまで以上に教師からいじめが不可視化されている疑義は確かにあるけれども、大人がいじめに目くじらを立てるほど、リアルな教室でも先生からはいじめが不可視化されるようにできている。僕も中学くらいまでいじめられっ子だったから分かるんだけど、いじめられて先生に泣きついている間って問題は解決しない。教室でホームルームの時間とかに担任の先生が「○○君をいじめないで下さい」みたいな話をされたら最悪だ。いじめはどんどん闇に隠る。子供たちの屯してる掲示板を学校裏サイトなどといって苅ろうものなら、チクった子は楽園追放の元凶、学級みんなの敵だろう。
だいたい大人になったっていじめはあるのだから、いじめられっ子はサバイバル術を学んだ方が将来のためになる。というよりはいじめられっ子が何かを契機に自信を持つなりして主体的に状況を変えなければ、いじめって簡単には解決しない。そのためにネットいじめに対応できるカウンセリングや電話相談は必要だし、サイト管理者がネットいじめ被害児童をサポートしたり、周囲の大人の関与を受け入れる必要のある場合もあるだろうが、いじめの申し立てに応じてサイトごと遮断するなんて最悪だ。そのコミュニティで人間関係を改善する機会が失われ、いじめは闇に隠り、いじめられっ子が状況を変える術を学ぶ機会まで失われてしまう。だいたい公園で子ども同士のいじめがあったって、誰も公園のせいとは考えないし、もちろん子どもを公園から締めだそうなんてバカなことを考える奴はいないのに、どうしてITが絡んだ途端、技術が全て解決してくれると信じてしまうのか。
という訳でフィルタリングについて、猥褻・残虐には今の技術で対応できるけれど、法律をつくらなくても事足りているし、犯罪を助長しているか疑わしい。よく読むと高井私案では「児童に対し、著しく残虐性を助長する情報」を有害情報と定義しているが「残虐な画像」が「残虐性を助長する」かについては異見がある上、最近は感情移入しやすいヒーローもののゲームが、暴力描写の程度が高いゲームと比べて子供の攻撃性を増加させるという研究もある。とりあえず戦隊モノやハリウッド映画を規制する気がないなら、「児童に対し、著しく嫌悪感を刺激する残虐な情報」とかに書き換えた方が良い。
そして肝心の非行誘発やネットいじめに対して、フィルタリング技術は効果が極めて限定的だと考える必要がある。こちらは本人確認の強化や、ゾーニングによる安全性確保が有効だ。どうも全体的に企図していることと私案の書きぶりが噛み合っていない気がするのだが、まさか何かの地均しでISPを縛ったりコンテンツ規制機関を拵えたい誰かが、与野党の裏で糸を引いてるなんてことはないよね。

たたき台(高井私案)は、まず有害情報の定義について、

  1. 児童(18歳未満)に対し、著しく性的感情を刺激する情報、
  2. 児童に対し、著しく残虐性を助長する情報、
  3. 児童に対し、著しく自殺又は犯罪を誘発する情報、
  4. 特定の児童に対するいじめに当たる情報であって当該児童に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるもの、

と定め、児童が安心してインターネットを利用できるよう、サイト開設者、プロバイダー、国および地方公共団体がそれぞれ努力するよう求めている。

6校の児童592人についての調査結果を分析すると、知的だったり、見た目がかっこよかったり、魅力的な特徴を持つ主人公が登場し、攻撃するゲームでよく遊んでいた児童は、1年後に「敵意」が上昇していた。「ひどいことをした悪者に報復する」という、暴力を正当化するゲームでよく遊んでいた児童も同様に「敵意」が高くなっていた。
これに対して、攻撃回数が多い、たくさんの人を攻撃するなど、暴力描写の程度が高いゲームで遊んでいる児童の場合は、研究チームの予想とは反対に、むしろ攻撃性が低下していた。
この結果を坂元教授は「かっこいい正義の味方だと、プレーヤーが自己同一視しやすいため」と分析している。