雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

俺達ちゃんと政治もハックしているよ

泊まっているホテルのアイリッシュバーにMacを持ち込んで、サッカーの実況を聞きながら酔っぱらっているので適当に書く。そんな簡単じゃないよ、届いちゃいるんだ声は。数年前からずっと燻っていた有害コンテンツ規制を、丁寧に闘って、心ある仲間で闘って何年も前から踏み止まってきた。だから連中はとうとう内閣提出法案を出すのを諦めて、今度は正体を隠したまま抜き打ち的に議員立法を仕掛けてきた。政治に対して何も知らず受身でいるのは君らネットに引きこもって万能感を持て余している口舌の徒だけだよ。

何故,ネットはこんなに政治に対して消極的な参加しかしてこなかったのだろうか?ビジネスやライフハックや表現といった分野ではどんどんリアルを侵略していったのに,何故,政治のこととなると,こんなにも受身なのだろうか?と.

誤解してもらっちゃ困るんだが、政治にネット規制反対派の声はきっちり届いている。この件で僕は様々な政治家と話したが、与野党とも驚くほど、この問題を正しく把握している政治家が少なからずいるし、マスコミの目が届かないこともあるかも知れないが、彼らはちゃんと声を上げている。だからこそ青少年特別委がいくら威勢のいいことをいっても、総務部会や経済産業部会が反対して党内合意に至らず、民主党が法案を出したら手続きをすっ飛ばして対抗するという話に留まっている訳だ。
総合セキュリティ政策会議の議事録を読めば分かるが、警察は何年も前から自殺サイト問題を皮切りに有害コンテンツの問題に取り組んできた。ホットラインセンターの運営をはじめとして、徐々に対策は進展している。処理の迅速化など課題もあるが、当初期待していたよりもずっと多くの届け出があったことは、制度が社会から求められていた証左だろう。一方で拙速な法規制が導入されなかったのは、早くからこの問題にコミットしてきた関係者たちが踏み止まってきた成果でもある。
国際的にはここ数年、かなり踏み込んだ有害コンテンツ規制が中国や中東、シンガポールといった開発独裁国に限らず、ドイツや北欧でも制度化されつつある。米国でも毎年のように過激な法案が提出されている。だから中には日本の現状を手緩いと感じている手合いはあるのだろう。けれども注意していただきたいのは、日本でも数年前から民主主義的な政策過程の中で有害コンテンツ規制について議論され、かなり穏当なところに踏み止まりつつ、打った政策が比較的効果を上げてきたということだ。官僚が議員立法を仕掛けるというのは非常に変則的なカードで、そういった絡め手で攻めざるを得ないくらい、官僚も政治家もこの問題に対して正しい認識を持って真面目に取り組んできたんだ。ちょっと勉強して、現場にいってみると、政治って案外捨てたものではないよ。
一方で、これまでのやり方じゃ結局のところ子供たちを救えなかったじゃないか、という考えが根強くあることには目配せする必要がある。これは実際のところ大きな問題なんだ。だから池田さんのいうように、ネットからも対案を出していくことが非常に重要だ。僕はネットによって被害件数が増えている訳ではない以上、ネットが犯罪や非行を助長しているとは思わない。けれども個別の案件をみた場合に、ネットが関わっている犯罪事案が少なからずあることは事実だし、ネットが濡れ衣を着せられても仕方ないくらいの状況証拠が上がっている現実から目を背けるわけにはいかない。確かにネットで示し合わせて集団自殺したり、家出したり、体を売っている子はいるんだ。彼らはネットがなければ街で同じことをやるのかも知れないけれども、今とりあえず彼らがネットを使っていることは認めざるを得ない。
もちろん、だからといって有害コンテンツを定義して削除すればいいというのは暴論だ。これは度々ブログで書いているけれども、コンビニで未成年が酒やタバコを買うことがあるから、酒タバコをコンビニから撤去するか、子供をコンビニに立ち入れないようにすべきだ、というのが暴論なのと同じだ。青少年特別委案を読むと、提案している議員に悪意があるかはさておき、その気になればいくらでも言論弾圧に使える構成になっており、しかも歯止めとなる仕掛けが何もない。戦前の言論弾圧が日比谷焼き討ち事件の前例を踏襲して可能となったように、この手の制度は時間差で効いてくるから慎重に議論する必要がある。
個人的にはネットが非行や犯罪を助長しているかは別として、ネットを通じて非行・犯罪予備軍を補足できるのであれば、そのコンタクトポイントの活かし方を考えよう、そしてコンテンツ事業者を動かす場合は、できるだけ規制や行政処分ではなく責任制限を活用しよう、という考えだ。例えば出会い系サイトを削除するのではなく、出会い系サイトで買春した大人を摘発した方が効果的なのだ。何故なら買春親父を野放しにすればどうせテレクラとか他の手段で同じことをやるけれども、出会い系サイトを使って彼らを摘発できれば、彼が次に同じことをやるには勇気がいるだろう。自殺サイトも同様で、これまで報道で飛び降りやリストカットといった手法を知ったり、完全自殺マニュアルを買うなど自殺の予兆を捕捉しようがなかったのが、自殺サイトの登場で自殺前に彼らが書き込んでくれるようになった訳で、これまで通り自殺サイトを泳がせておいた方が、予防できる自殺の数は増えるだろう。
最初の話に戻ると、ビジネスやライフハックと比べて政治が難しい点があるとすれば、政治が利害調整である以上は争点がゼロサムとなりがちだということだ。Win-Winのプラスサムもアリなビジネスやライフハックとは、そこが大きく異なる。では政治的争点がゼロサムとなりがちだから、本当に政治でWin-Winの関係をつくれないかというと、そうでもない気がする。例えば有害コンテンツ規制の場合、フィルタリングを義務化するか否かという各論ではゼロサムの議論とならざるを得ないけれども、青少年健全育成とコンテンツ業界の健全な発展は両立できるのではないか。そのためには、ゼロサムの争点に足をとられずに、Win-Winとなるよう争点を再定義する必要があるのだ。そういうSocial Hackは面白いから、ネットの片隅でブーたれている暇があれば、ぜひ取り組んでみて欲しい。マスコミは読者をいきり立たせるのが仕事だけど、煽り記事ばかり読んでいきり立ってるうちはガキだぜ。メディアにファックされてる暇があったら社会をハックしてみやがれ。