雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

流れに歯止めをかける為にネットユーザーができること

昨日のエントリがガス抜きとなっている懸念もあるので誤解を質しておくと、有害コンテンツ規制の法制化は今なお非常に危機的な状況にある。連休明けにも民主党が法案を出せば、対抗で自民党案が党内調整を待たず提出されることになっている。民主党は1月末の段階で、3月中旬までに両党で党内をまとめて政策協議にかける目論見だったが、両党とも党内調整に難航したため流れた。今のところ民主党が今国会で法案を提出する流れとなっており、対抗して自民党も今国会で法案を提出し、政策協議に乗ってトントン拍子で法律が成立する危険は依然として続いている。
政治が止まらないのは問題を認識していないからではなく、そもそも政治とは優先順位をつけるためのもので、多くの政治家は表現の自由コンテンツ産業の隆盛よりも、子供の安全の方が大事だと考えているということだ。だから産業界で一致団結して反対の狼煙を上げることは非常に重要だし、この法案の危険性について正しく認識することも必要だけれども、それだけじゃ大きな流れは動かない。業界が反対することも、この法案が表現の自由に引っかかることも、推進派にとっては織り込み済みだからだ。
規制反対派が今やるべきことは、徒に危機を煽るだけではなく、規制推進を正当化している事実認識を崩し、法案の制度設計上の瑕疵を突き、子供の安全を尊重する立場に立って、実効的な対案を提示することだ。まず事実認識については、以下のような整理が考えられる。

規制推進の前提 現実的な反論
世論は与野党の考えているような有害コンテンツ規制を支持している ネットの影響は懸念し、何らかの対策が必要とは考えているが、必ずしも有害情報の削除やフィルタリングを支持している訳ではない
自殺や家出、援助交際、ネットいじめ等を、ネットが助長している もともと思春期に起こりがちな逸脱行動について、ネットが道具として使われているに過ぎない
有害コンテンツを規制すれば、ネットが仲介する非行を減らせる 有害コンテンツを日本国内で規制しても、海外サイトに逃げたり、健全サイトに隠語で散らばったり、メールに逃げるだけで、管理を却って難しくする
ネット業界は金儲けのためなら青少年を危険に晒してもいいと考えている 青少年が安全に使えるサービスを提供しなければ、中長期的には事業が成り立たなくなる
保護者の認識不足からフィルタリングが普及しない フィルタリングの利点より弊害が大きいから普及しない

こういった前提を踏まえて、施策に対しても対案をぶつけることが重要だ。

自民党 問題点 対案
有害情報を新たに法律で定義する 定義が不明瞭で拡大解釈に歯止めがかからない虞がある 民間自主規制と事故再発防止
ISPに対する行政処分 萎縮効果が大きい ISPに対する責任制限の拡大
独立行政委員会の設置による有害基準の定義 過度に裁量的となりプロセスも不透明 違法コンテンツに対して裁判所が判断
有害コンテンツの削除 大人も閲覧できなくなり、実質的な検閲に当たる セルフラベルとゾーニングの導入推進
ネットいじめの削除 いじめは被害児童の主観で判断が難しい 相談窓口の拡充と仲裁窓口の設置推進
家出・自殺・薬物販売サイト等の削除 犯罪抑止効果は期待できず、却って書き込みを拡散させる 有害サイト等の犯罪捜査への利活用と、悪意ある大人の摘発

といった整理が必要となるだろう。日本では未だに違法サイトに対する対策も十分とはいえないので、建設的な対案を出す余地は大きい。
嘆いていても始まらない。有害コンテンツ規制の法制化へ向けた動きに対抗するには、阻止すべき点に対しては小異を捨てて団結し、業界や消費者、保護者として反対の声を上げる一方で、制度設計の前提となる事実認識に対して証拠に基づいた批判を行い、実効性が高く拡大解釈に明確な歯止めをかけることのできる対案を早急に整理して、ネット犯罪を憂慮し有害コンテンツ規制に対して消極的に賛成している中間層を切り崩すことが何よりも重要だ。