機中にて『天下之記者』読了
早稲田といえば昔から名だたるジャーナリストを数多く輩出しているが、創設者のひとりがフリーライターのはしりだったとは知らなかった。根は几帳面だけど、伊達と酔狂で1ライターとして人生を終えた奇人「山田一郎」の生き様には迫力を感じる。明治初期の教育制度の変遷を追う上でも便利な1冊。
- 作者: 高島俊男
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/02/01
- メディア: 新書
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本書の主人公である山田一郎は東大在学中から政治に目覚め、大隈重信の孫弟子として立憲改進党や東京専門学校の設立に邁進したが、手掛けた『内外政党事情』の失敗や早稲田移転騒動などを受けて静岡に下野している数年の間に、同窓生がみな官民で出世してしまう。膨れ上がる自意識と焦りの中で、同窓生たちが与えてくれるチャンスを悉く棒に振って、1ライターとして日本中の地方紙に原稿を書き、不養生が祟ってか46歳の若さで亡くなっている。
本書を読んでいて彼の身勝手が口惜しくもあり、そこまで意識して在野の記者に甘んじ続けたことの葛藤や屈折について考えさせられ、零落というがライターの生活としては充分に恵まれているような気もして、あまりうまく纏まらない。ともかく大変な意地っ張りだったんだろうね。僕も仕事していて、仕事の引き際のようなことを意識することがままある訳だが、タイミングによっては時代から取り残されるのかもなあ、と怖くなった。今の時代、逆もまた真かも知れないが。