雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

そろそろBIとか戦争待望論についてひとこといっておくか

確かに勤労意欲とか考えると最低賃金生活保護との間で辻褄を合わせなきゃいけないことは確かで、そこでBI(ベーシックインカム)的な両者を接合する算定手法って使えるのかも知れないよね。けれども仕掛けよりは運用に魂が宿るというか、現在の物価水準でBIを5万に設定すればネオリベ的だし、20万に設定すればBI本来のコンセプトに近づくのだろう。で、後期高齢者医療制度で燃え上がった世論がダンコーガイ的BIを受容するとは考え難く、本家BIっぽい制度を運営できる財政的余裕があるのって中東の産油国くらいだろ、という現実がある。だから現実問題として、BIは哲学的論点となり得ても政治的論点たり得ないのが実情だ。
いまニート論壇に最も欠けているのは対案で、ベーシックインカム論って数少ないネタではある。だけれどもマクロ経済的に詰まった議論ってみた試しがない。仮にあらゆる政治的困難を乗り越え、道路財源を削り、外郭団体の梯子を外し、相続税率100%にして本来のコンセプトに近いBIを実現できたとして、搾取的な労働から若年層みんな忌避すればコンビニやファミレスが崩壊し、製造業のピラミッドも根元から崩壊し、気づいたらワーキングプアを支えていた社会資本は崩壊して、期待していた財源も雲散霧消しているのではないか。数あるBI論で、BIによって若年層による労働逃避が起こることのGDPや税収、物価に対する影響まで織り込んだ試算を寡聞として知らない。
赤木智弘さんは比喩でいってるんだろうと信じるが、戦争待望論は現実の戦争を知らなすぎる気がする。戦争って意外と平時の格差とかもコピペするんだぜ。もちろんミスマッチによる例外だって少なからずあるけど、金持ちや優秀な学生は兵役免除され、作家は戦時記者となり、技術者は工兵となり、或る者は上官の指示ミスで爆弾を担いで敵陣に特攻させられて軍神に祭り上げられる、それが戦争だ。たまたま戦時ホワイトカラーの定員からあぶれて一等兵から入る知識人も、いるにはいる。けれどもそこにカタルシスを感じるために始めるには、戦争ってあまりに過酷な現実だ。
赤木さんも僕より微妙に年上だが、日本に徴兵制が敷かれて僕らが招集される状況って、戦況としてかなり終わってるよ。そうなる前に、誰が相手か分からないけれども降伏しなきゃ阿呆だ。というより日本ってそもそも戦争に負けたって地政学的に占領され難いし、今のところ自衛隊の装備からいって外征は難しい。それ以前に今日の戦争とは、第二次大戦時とは大きく姿が異なる。カタルシスへの欲望の比喩としては面白いけれども、間違いなく戦争はロスジェネを幸福にしない。あえてメリットを見出すとすれば、経済封鎖となれば食糧の配給制が敷かれてメシに困らなくなる可能性はあるかも。
例えば今CNNをつけるとスポーツとか枠とか丸ごと返上してミャンマーのサイクロン被害を話題にしているし、先月オスロでFinantial Timesとか読んでいてもベトナムの米価とかに紙面を割いている訳だ。ブロゴスフィア界隈でのベーシックインカムの扱いとか非モテ論とか、そもそも井の中の蛙である日本社会の中で、更に濃く馴れ合っているんじゃないかね。
その辺、日経新聞さえ流し読みしていれば済んでしまうジャパニーズ・ビジネスマンの視野の狭さ、ホッテントリさえ流し読みしていれば心地よく馴れ合えるはてな村の住民の閉塞感みたいなことを感じる。そんなに文章を紡いでる暇あったら、もうちょっと視野を広く持て、そしてまず自分のことから救ってみろ、という気もする。
僕は別に自己責任を貫徹する世の中が正しいとは思わないし、世の中をそういう方向へと作り替えていく野望もない。自分がいまの社会でたまたま恵まれていると思うが、そういった社会を固定化しようという魂胆もない。ただ残念なことに、世の中って少しずつ変えていくか、勢いのあるときに一気に変えていくしかなくて、手遊びで動かせるのは前者だし、後者を期待して仕込んでおくにせよ、辻褄の合う経営を考えなければ文革の二の舞になってしまう。
しがない経済学徒としては、現実と折り合って政治経済両面のバランスに目配せしつつ、日本経済に別のベターな均衡があるのではないかという知的好奇心と理想と志は持ち続けたい。けれども格差を解消する銀の弾丸なんて、たぶんないんじゃないかな。だから夢のない話ではあるが、最低賃金をどこまで上げたとしてマクロ経済に正の影響を齎すかとか、そういう地味な議論に徹した方が現実的である気がする。

私は、現在の生活保護制度は上手くいっていないので、どちらかといえば「ベーシック・インカム」を考えています。生活保護、のもう少し働くことへのインセンティブを高めた方法で考えています。今の生活保護制度は、申請しにくいし、一度始めると止めにくいという状況に追い込みやすい制度ですので。

たとえば、年金と生活保護が月たった5万のBIにとってかわるダンコーガイワールドにおいては、一人暮らしの老人はBIだけではとても生きてはいけません。つまり、我々は「正しい行動」を押し付けられていなくても、「正しい行動」を取るように強いられているわけです。

  1. 戦争は、それ自体が不幸を生み出すものの、硬直化した社会を再び円滑に流動させるための「必要悪」ではないのか。戦争がなくなれば社会が硬直化、すなわち格差が発生し、一部の人に不幸を押しつけることになる。ならば、戦争がなく、同時に皆が幸福な社会というのは、夢物語にすぎないのだろうか?
  2. 成功した人や、生活の安定を望む人は、社会が硬直化することを望んでいる。そうした勢力に対抗し、流動性を必須のものとして人類全体で支えていくような社会づくりは本当に可能だろうか?