雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

10年泥を根元から絶つには

昨日は九大で講義。清水さんとの応報で学生にこのブログは知れ渡っていたようだ。で、懇親会の話題は10年泥。例のイベントに登壇した学生もいた。やはり「10年は泥のように」と聞いて、その場にいた学生の空気はかなり変わったらしい。修士2年でSIerを中心に内定を取れているが、みんな10年泥と聞いて気が重いらしい。IT業界に興味を持って欲しいにしても明るい話はないし、あれじゃ逆効果だよねと盛り上がった。

実質的な活動,つまり講義を受けたり,研究室で実験したり,論文を書いたりといった活動をしているのは,なんと「学部は2年半,大学院は半年」だそうです。原因はもちろん,就職活動です。

IPAや西垣氏に悪気はないんだろうけど、自覚のないところが救い難いんだろうな。結局、悪いのは大企業による新卒一括採用なんだよね。そういう会社に入ったら覚悟する必要はあるよね、IT業界にはそうじゃない会社もいっぱいあるから探してみなよ、というのが模範解答かも。ところで新卒一括採用の歴史はリクルートWorks61号の特集が秀逸。要は第一次大戦後の好況期に生まれた制度がバブル期までの成長で堅持され、経済の成熟で岐路に差し掛かっている訳だが、そういう大局観なしに「10年は泥のように働け」なんて、財界人の戯れ言としてなら許せても、産業政策の担い手としては如何なものか。
長期雇用の弊害に対しては、所管が文部科学省厚生労働省経済産業省にまたがっているせいで、縦割り行政でデタラメなことになっている。片や大学院重点化でポスドク浪人を量産し、学生が就職活動で本業であるはずの学業に身を入れる期間が限らる状況に措置せず、片や会社身分制を強化した整理解雇四要件に手を付けず、自分のことは棚に上げて中小企業にまでワークライフバランスを押し付け、片や重層的な下請け構造が問題といいながら新卒一括採用・年功賃金・終身雇用を前提にした「10年は泥のように働け」なんて発言が外郭団体の長から無自覚に出てくる。
新卒一括採用の改善も役所が隗より始めよ、といいたい。法曹一元化で検察、裁判官、弁護士の流動化を進めると同時に、役所の法律職や国会・内閣の法制局、政党の政策スタッフについても流動化すべきだ。国会議員の政策立案能力を高めるには、政策秘書や議会スタッフを法曹界にとって魅力的なキャリアパスとしなくてはならない。産官学の人材流動化を活発化させるには、組織的斡旋ではない天下りについて積極的に認める必要がある。不正に対しては、背任や受託収賄の取り締まり強化で対応すべきではないか。役所にいてはできない省をまたいだ大仕事を完遂するために、何年か政権党のスタッフになるといった決断をカジュアルにできるようにすべきだ。ルサンチマンに駆られて無闇に叩くのではなく、優秀な人々が頑張れば世の中を動かせ、報われる仕組みを考えることが重要だ。
30代以下なら産官学を問わず否応なく受け入れている成熟経済の現実を、逃げ切りつつある団塊世代が無自覚であったり華麗にスルーしていることが、この国や業界の閉塞感を強めているのではないか。経済の成熟で組織と人材との共依存関係が壊れつつある中、文句ばっかいっても詮無いし、変化への希望をみつけて自分から動く必要がある。