雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

電子書籍も電子貨幣も 新しい革袋に古い酒

ケータイ小説がミリオンセラーとなったところで出版文化のネット化は面白いほど進んでいる気がするし、家電メーカーの電子書籍リーダーが売れなかったところで気にする必要。結局のところ新技術で既存の何かを模倣しても駄目。新しい文法に合わせて、新しい文化をつくらなきゃ。

今回の失敗は、あまりにも既存の書籍ビジネスを電子的に転換することに集中・配慮しすぎたことではないかと思う。携帯書籍のようなまったく新しい流通を生み出すインフラが、ネット上に構築できなかったというのは、「ネットの自由」からはほど遠い現実として受け止めなければならない。

いまじゃ笑い話だけど、10年くらい前は電子マネーについて大真面目に語られていた。SSLはカード番号を加盟店に渡すところが危ないので、SETで三角決済にしようとか、いやデジキャッシュのブラインド署名だとか、Mondexもネット対応しまっせとか。10年以上経って、けっきょくSSLでカード番号を流してAmazoniTMSで買い物し続けているなんて、当時の電子マネー屋からみたら悪い冗談だろ、みたいな。SETの複雑なプロトコルにボーナス一括払いとか突っ込むために、何億円くらい使ったんだっけ。
電子書籍も、既存の本を紙っぽいUIで提供することに固執し過ぎていて、それってそんなに大事だっけ、みたいな話はある。辞書の電子化とか着実に進んでいる訳で、それは紙の辞書ほどかさばらないし、検索とか発音再生とかネット的な特徴を活かせていることもあるんだろう。そのうち電子辞書にWikipedia参照機能とかついたら笑うかも。
どっちにしても、電子的に現実を模倣しようとしたって、ちょっと不便な何かをつくることにしかならない。コンピュータだから、ネットだからできる新しい価値とか創造プロセスとか文化がないと、伸びないんだよね。貨幣や書籍に限らず、電子何たらって企画はまず疑ってかかった方がいいよ。提供できる価値が明確なら、既にある何かに価値を仮託する必要はないんだしさ。