雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

違法情報とネット広告規制に関する議論

広告運営者が各々に審査基準を設けていることは承知しているが、約款で「違法な広告、違法または詐欺的な営業行為を行うこと」を禁止し、運営者が把握できる範囲で審査することと、それによって違法な広告が表示されないことが担保され、notice and takedownが不要かとは別の問題だ。

このエントリとコメントについて補足するなら、本来、「notice & takedown」で運営者が保護されるというのは、ユーザーが問題のある投稿をした場合の責任を回避させるためであって、運営者自身の判断を保護しようなんてものではない。

そもそも違法な広告の法的輪郭が意外と明確ではなくて、運用実態としては広告表現そのものが薬事法に違反していないか等はキーワードで監視していても、リンク先の商売の実態まではチェックできていない。審査したところで必ず抜け漏れが出る訳で、今は約款で広告主に賠償責任を被せているけれども、被害者が如何わしい情報商材を売っている零細広告主に対して損害賠償を請求しても履行され難しい一方で、約款上では免責されている広告運営者や代理店は確実に利益を受け取っている。この免責が有効かどうか裁判で係争する余地はあると考えられるが、情報商材の被害者が広告費分だけ取り戻しても焼け石に水ではある。消費者保護と犯罪抑止の観点からは、広告運営者やサーバー管理者等に対して通報窓口を用意して適切に対応する義務を課すことで、悪質な広告の表示を抑止できるのではないかという議論が出てくる可能性がある。
青少年ネット規制法の附則を受けて違法情報対策の議論が始まっており、そこでは児童ポルノのアクセス抑止手段や、犯罪告知情報の検知方法、硫化水素のときのような自殺誘発情報の扱いについて議論されるだろう。情報商材の被害が顕在化すれば、消費者保護の観点から検討せざるを得なくなる可能性が考えられる。また違法情報の定義について、発信そのものが違法な情報のみを法的に規制するのか、それともリンクやトラッカーといった違法行為や違法情報へのアクセスを誘発する情報を含めるかが大きな論点としてあって、後者の議論は広告規制に直結しかねない。
だから法的規制を招かないための理論武装や、業界として犯罪を誘発している虞があれば自主的に対応する姿勢をみせる必要が出てきている。わたしが言葉足らずだったとはいえ、そういった背景を踏まえて前広に議論をしているところで、運営者自身の判断が云々といった次元で知ったかぶりされても困る。