雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

プログラミング教育が機能しない背景

大学の情報教育には様々な課題があるけれど、ひとつに学部レベルからカリキュラムに対して教授自治が強すぎることがある。スキルの積み上げで講義内容を高度化するには、米国並みに基礎講座の標準化を進めなきゃ駄目だ。それができない理由は諸々あるが、大学によっては教員の質が論外。専門で行き詰まったり大学改革で食いっぱぐれた教員を、ポストの増えた情報系に無理に当てがい、学生より分かっていない教員が教えているところもある。レベルの高い学校でも教授の嗜好を強く反映しがちな上、その講義の前に積み上がるべきスキルが標準化されていないせいで、高いスキルを前提とした講義を行いにくい現状がある。

なんせ、情報工学出だろうが、情報系の専門学校出だろうが、文系大学出だろうが、新人で採るならひとしく無能だと思わなければならない。そんな出身校よりも、ホビーでプログラムするかどうかを問う方が当りの人材を引き当てれるということは、現在のプログラミング教育がプログラミング能力を育てることにおいてはほとんど用をなしていないことを示唆するだろう。

だいたいプログラミングは講義形式のマスプロ教育にそぐわない。意欲的な学生が自習すれば一瞬で先生より優秀なところまで伸びるし、駄目な学生はいくら丁寧に教えても駄目だったりする。重要なことは頭角を現した子に対して、適度に社会性を身につけるプロセスを提供するとか、世界がもっと広いことを示すことだろう。
問題は教育ではなく、できるプログラマーを引っ張り上げて場数を踏ませるプロセスじゃないかな。もちろん底上げの議論として、ちゃんと教えれば教えた程度に身につく人々に対して、順を追って高度な技術を教える必要はあるし、カリキュラム標準化や優秀な教員の登用など、やるべきことは山積している。
まあ、あと、コンピュータ科学とSIの現場とが乖離し過ぎていて、最先端のITを勉強した若手ほど、実社会に出ると失望するだろうな、という側面もある。まあ、念願のグーグルに就職したってベタな仕事に幻滅する若手はいるらしく、そもそも仕事ってそういうもんってか、プログラミングもといキャリア教育の領域か。
だから優れたカリキュラムを作ればいいってもんでも、会社が優秀な人材を応分の待遇で迎えればいいってもんでもない訳で、優秀なハッカーは自分で伸び、自分で居場所を見つけるだろ、と突き放してもいい気がするが、ちゃんと育てれば育つ層をどこまで引っ張り上げられるかが教育の役割で。人生の先達としてできそうなことは、磨けば光りそうな奴に、がっぷり組めば一皮むけそうな大仕事を振って、暖かい目で見守れる環境を如何に増やせるかかな。