雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

プログラミング・ファースト開発は日本の情報サービス産業を救う銀の弾丸か

プログラミング・ファースト開発というと新しげに聞こえるけど、パッケージソフトの世界じゃ普通だよね。例えばWindowsとか多くのパッケージ製品に、SIに於ける厳密な意味での詳細設計書があるかは疑問。LinuxApacheも然りでしょ。「全部内製で、自分たちで最初から最後まで開発する」結果として、顧客が望むものを手に入れられるかはケース・バイ・ケース。お仕着せでつくるなら売り先を増やして単価を下げた方がWin-Winだし。

日本のSI業界の多重下請け構造をなくすためには、新しいビジネスモデルが必要なのです。
この新しいビジネスモデルこそ、「プログラミングファースト開発をするSIer」だと思っています。全部内製で、自分たちで最初から最後まで開発するSIer
ユーザから見るとこれまでより早く、コストが安く、自分たちの思ったものが手に入る。

日本市場でもいくつかパッケージソフトベンダが生き残っているように、ひがやすを氏の会社がプログラミング・ファースト開発を標榜する開発会社として生き残る余地は十分にあるけれども、それが多重下請け構造をなくすかは極めて疑問。ソフト産業に限らず日本の多重下請け構造の背景にあるのは、ベンダ・ユーザー企業ともに整理解雇4要件などに起因する硬直的な雇用慣行と、新しく小さなベンチャーと取引したがらない取引慣行がある訳で、開発モデルなどは本質的には枝葉末節であるように感じる。
では同じ重層的な下請け構造でもITじゃ問題でトヨタとかが成功しているのは何故?というと、部品単価で契約する製造業では、生産性向上による超過利潤が下請けのレントとなるのに対し、人月単価で契約する情報サービス業では元請けや発注元のレントになるから、生産性よりは動員力が売り上げや利益を左右することとなり、品質や生産性の高いベンダーよりは、品質や生産性が低くても動員力のあるベンダーが儲かって生き残るからだろう。そういった意味でも、開発プロセスといった技術要素よりは、プライシングとか適正な契約による責任範囲の固定、大きな赤字プロジェクトを生まないマネジメント等が重要になると考えられる。
プログラミング・ファースト開発のアプローチは決して目新しい訳でもないが、ひが氏がプログラミング・ファースト開発をするSIerとして、その辺のビジネスモデルを改善した業態を確立できれば、そういった新しい業態が業界に定着する可能性はある。けれどもそれが主流となったところで、残念ながら情報サービス業界の多数の会社を多重下請け構造から転換するには至らないのではないか。