雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

消費者庁ができても汚染米と似た問題は起こり続けるね

福田首相は消費者行政とか公文書管理とか地味だけど大事な政策課題を掲げていた気はするんだよね。とはいえ看板を掲げれば解決する話でもない。むしろ下手に消費者庁をつくれば似たような問題が増えるのではないか。そう考えるのは問題の本質が農水省三笠フーズとの癒着ではなく、国際的な流通実態からかけ離れた食品安全の規制強化、国際合意に対する盲目的な実施、政策の矛盾を解消せず、実態を把握しながら民間事業者に責任を押し付け、マスコミにバレた途端に手のひらを返したかのように厳罰を下す無責任にあると考えられるからだ。
農水省大阪事務所と三笠フーズとの癒着が問題になっている。仮に何かしら饗応があったとしても、担当者がその見返りに不正を見逃し捜査情報をリークしたというよりは、単に面倒な問題を起こしたくなかっただけではないか。本省の担当者とて自分の在任中に面倒なことを起こして欲しくなかっただろう。その小役人根性はどうにかする必要があるが、ありふれた風景にみえる。OBを通じた業界との癒着や人事慣行にメスを入れ、時間をかけて正常化していくしかない。国民向けのパフォーマンスで大臣・次官の首が飛んだが、当事者たちは未だに自分たちの運が悪かったとしか思っていないのではないか。掘り起こせば似たような問題は山ほど転がっているし、何ら対策は打たれていない。何せ原因が正しく総括されていない。
日本はウルグアイラウンド合意を忠実に守ってミニマムアクセスを受け入れ、国内コメ市場は守ろうとした。詳しくは終風翁が書いているが、これまで普通に流通していた汚染米が農薬規制見直しを受けて2年前から急に事故米となったようだ。理由は食の安全に対するヒステリックな関心の高まりにあるのか、国内コメ農家を輸入米から守るためかは分からない。積み上がった備蓄に対して会計検査院から突っ込みが入って早急に処分する必要に迫られたのだろう。農水省は半ば実態を把握しつつ、責任を三笠フーズに押し付けるかたちで事故米を処分したのではないか。カビ毒を真面目に調べることの波及効果にビビって関連する調査を中断した。
一連の流れの中で事故を防ぐ機会は山ほどあった。そもそも農産物市場を開放して国内コメ農家を守らなければ、ミニマムアクセスはなかった。条約上の義務があったところで、韓国のように無視することだってできた。農薬規制を見直す段階でも、流通実態に合わせて規制水準を海外とハーモナイズするなり、流通在庫に対する経過措置を定めることもできた。積み上がった輸入米の在庫を会計検査院で指摘されたタイミングで民間事業者に責任を押し付け急いで処分するのではなく、規制見直しを理由に廃棄するなり、安全基準が日本より緩い国へと無償援助することもできた。折りしもコメ価格急騰がアジアに影を落としていた時期なのだから、農水省、商社、援助対象国で三方一両得の解決策だってあっただろう。
けれども農水省三笠フーズに責任を押し付け、政治家は官僚に責任を押し付け、マスコミは騒ぎを煽って大臣と次官の首を差し出させ、問題を小役人と悪徳企業との癒着に矮小化しようとしている。こうやって小役人の「意識」だの「目線」だのという精神論を繰り返し、農水相は鬼門だとか、身体検査をきっちりしろなんて議論を続けている限り、これからも農水相を使い捨て続けながら問題を起こす構造は温存され続けるのだろう。
消費者庁なんてできた日には、これまで以上に現実から乖離した「世界に冠たる」安全基準をつくり、生産や流通の現場から目を背け、辻褄を合わせ先輩や自分の無謬性を維持するために見え透いた嘘をつき、民間企業に責任転嫁し続けるのではないか。そして遠からず深刻な食糧危機がきた時、本当に必要な食糧を輸入できなくなっているのだろう。
国際関係で条約などを額面どおり真に受けて損をするとか、減点主義で管理され先輩や自分の無謬性を守り抜くために平気で現状認識を捻じ曲げるとか、OBが民間に天下ってからも役所の人事に口を出すとか、責任を民間に押し付けて事故が発覚するとトカゲの尻尾を切るとか、これらは決して農水省に限った問題ではなく、国・地方を問わず日本の役所に共通する問題だ。こうやって日本は無謀な戦争に突入し、公害を把握しつつ放置し、バブル経済が膨らみ弾けるに任せ、ロスジェネが生まれるのを放置するどころか正規雇用非正規雇用とを分断することで切り捨てた。
たまたま農水相ばかり碌な辞め方をしないのは、それだけ時代の変化の中で捩れの大きな政策領域だからではないか。腐敗が起こるのも役人の「意識」だの「目線」といった人格よりは、開き直って筋を通すことの難しい、ガバナンスやインセンティブを巡る構造的な問題があるからだ。この構造はマスメディアが大衆の怨念に迎合して軽い神輿の首を取りに行き続ける限り、運の悪い担当者と業者との癒着に問題が矮小化され続け、その度に国民は溜飲を下すだろうが本質的な問題は解決しない。こうして国の権威は失墜し続け、優秀な若者はますます公僕を志さなくなる。
この悪循環を断ち切るためには、もっと深いレベルで政策過程の課題を洗い直し、政治がリーダーシップを発揮する必要がある。無闇に表面的な責任を追及してトカゲの尻尾切りを促し溜飲を下すのではなく、まずは志の高い当事者が長期的な視野に立って問題や矛盾と向かい合うことが許容される環境を整えるべきではないか。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

法案が次の政権で改めて閣議決定されても、衆院が解散されれば廃案となる。汚染米問題が物語るように、どう組織を改編しても官僚の意識が変わらない限り、消費者行政の改革は絵に描いたモチに終わる。「目線」を改めるためどんな組織が効果的か、議論を深めなければならない。

どうやら、03年以前というより、05年の時点でも今日なら事故米だったものが、普通に流通していたよういだ。メタミドホスによる「事故米」の登場は、どうも2年前の変化と見てよさそうだ。
(略)
現在、メタミドホス事故米について安全性の視点からかその流通経路が話題になっているが、「汚染米の流通は相当以前から続いており」ということで、現在の事故米流通だけが問題ではない。整理したいのは、「事故米」と「汚染米」の関係だ。

おそらく三笠フーズは、メタミドホスの問題を熟知していて、だからこそ安全性の対処を行っていたのではないだろうか。
関連して気になるのは、先ほどの朝日新聞記事”工業用の米、食用と偽り転売 農薬・カビ含有”に言及があるのだが、ポジティブリストの関連だ。
(略)
こうした読みは穿ち過ぎなのかもしれないが、今までわからなかったというのも不自然だ。農水省としても、最低でも三笠フーズへの信頼感のようなものはあったのではないか。というか、農水省三笠フーズもこれをそれほど食の安全性の問題とは認識してなかったのではないか。実際、この事件に限定すればそれほど安全性という点で被害は出そうになさそうだ。

それで、今度は間違えないように、できる限り徹底的に調べてみたんだけど、あたしが不自然に感じてたこと、つまり、平成19年度の調査において、16項目のうち「食品中に含まれるカビ毒(オクラトキシン、アフラトキシン、ゼアラレノン)の汚染実態調査」だけが「中止」にされた理由ってのが、何となく見えて来た今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
(略)
‥‥そんなワケで、政府がインペイしたがってるカビ毒の問題だけど、あたしがリトル調べてみただけでも、この国の食品は危険なものだらけだってことが分かった。特に、九州を始めとした西日本では、牛も豚もニワトリも、そのほとんどがアメリカからの輸入飼料で育てられてて、1割から3割にも及ぶ個体が原因不明で死亡し続けてるのに、その原因究明の調査もしないまま、生き残った個体を食用として出荷し続けてたことも分かった。