別の融合法制を考えてみる
これから11月危機とか本当に起こったら明後日の話をする空気なんて吹き飛ぶかも知れないけど、先の見えない時代こそ巨視的な視座を持って考えるべきだよね。という訳で、これから数年について考える訳ですよ。たぶん情報通信法という1本の法律はできない気がする。e文書法のように融合法制の大括り化へ向けたいくつかの法律改正案を束ねたものを情報通信法と呼ぶかも知れないけど。レイヤーで切って3本とか4本なんて話も聞こえてくるが、個人的には新旧分離して法律の本数を減らす必要はないと考えている。それどころか後述するように増やすべきかも。
いろいろ考えたが伝送サービス規律、プラットフォーム規律、コンテンツ規律という切り方の座りが悪い。僕の直感では電波法と有線電気通信法が同じレイヤーというのは奇妙だ。あとコンテンツといったとき、地上波からCGMまで大括りで議論するってどうよ、みたいな話もある。というかCGMを事業法の枠組みで扱わないで欲しい、真面目な話。と諸々考えたのだけれども、あえて横割りレイヤー構造に拘るのであれば、
- 資源規律 (電波など限られた資源の帰属・高度利用のための整理)
- 設備規律 (電気通信設備の技術基準、相互接続などの整理)
- 役務規律 (通信の秘密など役務提供者の守るべき原則の整理)
- 利用規律 (役務利用者の権利義務の整理)
こうすれば妙な外来語で議論に混乱を来すこともなく、法律との対応関係もすっきりする。この横割りレイヤーに収まらないのは融合法制で見直しがあまり議論されていない電気通信事業法で、通信自由化の時に電気事業法を下敷きにした法律が、今では1万社を超える事業者が届出を行い、うちどれだけ今も事業実態があるか分からないという奇妙な法律だ。
個人的には電気通信事業法を指定設備保有者と相互接続希望者だけが改めて登録する新・電気通信事業法と、届出不要として日本国内に設備を持っていない事業者も日本向けにサービスを提供する場合に守るべき電気通信役務法とに分離し、日本にサーバーを置くことで事業者が不利となる状況を早急に改めるべきだと考える。
コンテンツ規律なんて切り方をするから特別メディア・一般メディア・オープンメディアといった奇妙な分類が出てきて社会的影響力で区別しようという話になるが、既存の放送法を堅持するもよし、横割り規制に移行すれば総合編成とかの義務を外して自分の使っている周波数の多目的利用を認めるよ、くらいの特典があれば、この広告不況の折、放送設備を放送プラットフォーム事業に切り出し、ホワイトスペース活用を系列ブロードバンド事業者に認め、テレビ通販事業に力を入れる開明的な地方局とか出てくるかも知れないし。放送インフラに対しては引き続き資源規律、設備規律、役務規律として縛ればいい。いまや多チャンネル時代で、地上波の民放といえども特権的な地位にいる訳ではない。内容の担保は政府による規制ではなく、民間の競争に委ねれば十分ではないか。
いまの融合法制論議ではあまり議論されていないのだが、衛星放送やケーブルテレビ・有線放送・地方民放を無理にIP的なレイヤー規制に押し込むことは諦めて、縦割り規制は旧法制として凍結し、レイヤー横割りの新法制でイノベーションの促進と諸外国とのイコールフッティングを行うべきだ。具体的には米国で解禁となったホワイトスペースを電波法でどう扱うかの検討をはじめる他、電気通信事業法の設備規律と役務規律を分離して後者を非届出事業者にも義務づけ、利用規律は業法的な枠組みの外に置いて民法・刑法・著作権法などの特別法として整備する、といった構成はどうだろう。