雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

IVS2008 unconferenceの様子

IVS2008の2日目に、会場とインタラクティブに進めたunconferenceでは、最初はiPhoneGoogle Androidか、とか、通信プラットフォーム関連の議論が紹介されたのだが、結局のところプラットフォームの共通化はコスト削減のための避けられない道であって本質的な問題じゃないよね、大事なのはケータイがこれからどう人々の生活を変えていくかにあるんじゃないか、とはいえベンチャーの立場で、どのプラットフォームにキャッチアップしなきゃならないのか悩ましい、といった声も聞かれた。あの2つはWebKitベースだからHTMLレベルでは今より互換性が高まる気もするが。
あまり結論らしい結論が出た訳でもないのだが、インフラ系の議論ってコンテンツ屋さんからあまり見えていないんだなあ。わたしはケータイでは画面サイズや処理能力に制限が大きく、APIを共通化しただけでは駄目で、iPhoneのように画面サイズとか性能のところを揃えることが重要になる気がしていたのだが、セッション後にid:wa-renさんと話したところ最近の携帯電話向けチップってかなり強力で、APIレベルが共通化されるだけでも面白くなりそうだという。会場で概ね近い将来ネイティブAPIにも触れるオープンな端末が増えるであろう、という点については合意があったが、引き続きキャリア主導の垂直統合モデルもマジョリティ向けには重要であり続けるだろう。アーリーアダプタ向けに水平分離端末が売れ、そういった世界で育まれたイノベーションが数年遅れで垂直統合モデルに取り込まれるような構図となるのではないか。
ここからは後から考えたこと。今年の秋冬モデルから投入モデル数で結構な差が出始めているけれども、これはインフラ強化に投資しなきゃならない会社が、端末の開発費を絞らざるを得なくなっているのかなあという風にみることもできる。しかしMNPも一巡して端末の魅力で加入者を奪い合うモデルがいつまで続くのか。インフラはLTEの流れもあって投資し続けなければならないとすると、端末ベンダに対するキャリアの支配力は薄れてくるのではないか。既にHTCのように複数のキャリアに近い端末が納入されるケースが出てきている。
いずれにしても買い換えサイクルが長くなったことで、端末の差別化だけで顧客の乗り換えを促すことは遠からず難しくなるのではないか。インフラに投資したキャリアはARPUを維持しつつ他社の真似できない負荷の大きなサービスを出してくる可能性があるが、LTEもいきなり全国展開じゃないとすると魅力的なサービス設計って難しそうだ。無線LANフェムトセルを使った基地局のオフローディングが、今よりは進んでいるかも知れない。遅延が小さくなればゲーム機でも使えるし、実は携帯型ゲーム機って画面サイズやMPUのライフサイクルを長く取る点では携帯端末プラットフォームの先をいっていて、任天堂SCEが自社端末にサービスを提供するためのMVNOをつくるような話が出てきても不思議ではない。ゲーム機では一定の開発ガイドラインを強制する仕組みがあるので、なかなか面白いことができそうだ。ただ子供に持たせるとするとARPUは低く抑える必要があって、ついでに本体価格もゲーム機の方がだいぶ安い。
オープンソースとかクラウドとか、サービスを立ち上げる時の初期コストを大幅に押し下げるイノベーションが諸々ある一方で、どの技術にコミットするか、数年後の世の中がどうなっているかの読みに関しては却って難しくなったようにもみえる。様々なパターンがあるからこそ、新参であってもゲームをひっくり返すチャンスが出てくるわけで、これはこれで競争の観点からは機会があるともいえそうだ。では逆に、これからリスクをとる彼らから受け入れられるプラットフォームとかサービスって何だろう、とか考えると頭が痛い。