雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

ロスジェネは共闘できる

Chikirinが僕と赤木智弘の間に横たわる越えられない壁について分かりやすく整理している。で、論壇なら人口に膾炙しやすい話題を軸に自説を唱えて固定読者に溜飲を下してもらうのが仕事かも知れないが、そういう年寄りの趣味に付き合っている余裕はない。僕らロスジェネなら政府から具体的な政策を勝ち取るという一点で共闘できるよね。意見Aは具体的で実現可能な政策玉を仕込み、意見Bは群れて窮状をアピールしデモで突き上げてアテンションを獲得すればいい。

そして、意見Bは意見Aを「徒に世代対立を煽る輩」と批判し、別の言葉でいえば「労働者の分断を図る卑劣な意見」であると非難します。意見Aに言わせると意見Bを主張する人達とは「未だにマルクスの亡霊に取り憑かれている100年遅れた職業運動家」に過ぎません。(略)
両方とも若年者失業問題という合意の得やすい問題を“利用”して、自説を唱えているだけなんだな、と。彼等にとって若年者失業問題は「解くべき課題」ではなく「利用できる課題」なのだと。

以下、全て引用はできないけれどChikirinの記事を読んだ前提で書くぞ。給与が能力への対価か生活給かって点だけれども、取っ払いで対価を受け取りたければ独立すべきで、会社に身を寄せる以上はマッチョだろうが自分の産んだ付加価値と切り離された給与体系を受け入れるってことだよね。
「中高年の得ている対価が不当に高い」会社に問題があるとすれば、それは能力や成果に対し分不相応だからではなく、若手の機会と士気を奪い人的資本の蓄積を難しくし、結果的に会社の事業継続性を損なうからだ。会社が成長し続けポストが増えて優秀な若手を仕事で報いることができるなら、多少は中二階で遊んでいる連中がいたって組織は腐らない。
問題は経済が成熟する中、若手が歯を食いしばって先の見えない中で頑張っても仕事や報酬で報われず、中二階の連中は下に仕事を振るばかりの極楽とんぼだったら、これから会社を引っ張るべき優秀な若手の心が折れちゃうよね、それじゃ経営として成り立たないだろうってことだ。中高年を切って困るのは彼らの息子世代じゃんという異論もあるが、中二階で正社員として守られ高報酬を得ている層って実はそれほど多くない訳で、親世代の一部だけ救ったところでロスジェネ世代の格差が拡大するだけだ。
いま打つべき政策は、最低賃金の引き上げ、正社員と契約社員との痛み分け、新卒一括採用の抑制、住宅補助や保証人代行業への規制を通じた定住支援、農林水産業・商工業の脱家業化を通じた技術継承と世代交代の支援ではないか。これらを通じて誰もに希望と能力開発の機会が提供されるべきだ。
まず最低賃金は1000円以上に引き上げるべきだ。多くの中小企業が苦しむというが、安い賃金に安住して仕事のやり方を変えないことが問題なのであって、最低賃金の引き上げを通じて生産性向上のための技術革新を促す効果が期待できる。一時的に倒産や失業が増えることも考えられるが、3〜5年スパンでみれば低生産性企業の退出が、新たな産業や雇用を産む可能性もあるのではないか。
正社員と契約社員との痛み分けは、欧州を参考に同一労働同一賃金ワークシェアリングなどが提案されるが、現実には均質な労働市場がある訳ではなく難しい。まず正規雇用の労働者保護を緩和し、正規雇用非正規雇用の壁を取っ払った上で、全ての労働者に適用される新たな保護を検討すべきだ。
先日ソニーが1.6万人のリストラを発表したが、ちょっと前に飛び出していれば簡単に再就職も容易だったところを、一気に切られたら労働市場が売り一色となって再就職は難しいのではないか。経営が苦しくない限り解雇できないルールが、却って再就職を難しくして、便乗解雇を横行させている。
例えば全ての労働者について、労働時間、雇用保障、能力開発いずれか2つを満たすことを企業に義務づけてはどうか。時間に余裕があって仕事を通じて能力開発できれば、雇用保障がなくとも自力で人生を切り開ける。雇用と能力開発が保障されるならば、健康を維持できる範囲内で長時間労働を認めてもいい。外で潰しのきかない仕事であれば雇用は保障され労働時間は適正であるべきだ。いまの非正規雇用は、余裕も安定も希望も何も保障されていないことが問題だ。
これは世代対立や労働者の分断ではない。経済が成熟する過程でも日本の産業が生き残り、多くのひとが希望を持って人間的に働き自分の能力を高め得る環境を築くための提案だ。