雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

労働契約の多様化へ向けた道筋

「定年までの有期雇用」という雇用形態にメリットはあるが「期間の定めのない雇用」を一律に「定年までの有期雇用」と読み替えることには違和感を感じる。電機各社が大幅なリストラを発表したが、この時期に解雇して彼らにどうしろというのか。いま切れば裁判にも勝てると踏み、同じ時期に必要以上の人を切る合成の誤謬が生じているのではないか。

解雇規制の緩和ではなく、多様な雇用形態の解禁、雇用期間・労働契約の多様化を通じて二極化を解決していくことができるはずです。実務家にしてみれば、「定年まで」という雇用形態には効率的な人材育成や技能形成、弾力的な稼働対応や配置転換などの面でメリットが非常に多く、これを禁止されるのはかなりつらいものがあります。いっぽうで、多様な雇用形態が可能になれば、「定年まで」が現行の3分の2から5分の3なり2分の1なりに減少していく可能性はあります。

多様な雇用形態を解禁するに当たり「期間の定めのない雇用」の枠内で、期間に限らず雇用継続の前提について労使で合意されている場合に、整理解雇の四要件を上書きできないか。「雇用継続の前提」の類型として、例えば「当該業務が継続する期間」「約束した成果を大幅に下回らない限り」から「定年までの有期雇用」まで考えられる。いわゆる雇用規制の緩和と異なり、改めて「雇用継続の前提」について合意しない限り従業員の保護水準は変わらない。正社員という身分で「雇用継続の前提」を柔軟に設定できれば、景気回復時に失業率の改善を早める効果を期待できる。
必ずしも制度がいまの雇用慣行をつくったのではなく「期間の定めのない雇用」が「定年までの有期雇用」と期待される時代背景や歴史的経緯があった。しかし右肩上がりの成長が終わり、従前の仕組みでは卒業年次などで著しく機会不均等が生じ、現に企業のセーフティーネットから滑り落ちる層を無視できなくなった。今や企業に雇用維持や再教育の責任を押しつけるだけでは、個々人が長期的に安心してキャリアを積み重ねられる環境ではない。
派遣切りや人員整理など企業や派遣業者の責任ばかり問われがちだが、企業が人件費を変動費化せざるを得なくなったのは、1990年代に入って政府が金融を自由化したからだ。制度論としてはその時点で、家庭や企業の担ってきた福祉機能を如何に社会化するか検討すべきだった。そこを怠ったまま旧態依然とした雇用構造を延命するため、解雇規制に手をつけず派遣労働の条件を大幅に緩和した。それが世代間の機会不均等を生んだことを責めても詮ないが、この大不況を契機に、できることから手をつけるべきではないか。