雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

薬事法施行規則、悪しき業者行政もいずれ是正されるはず

薬事法施行規則の狙いが薬剤師の雇用保護だってことは前にブコメやトラバで指摘を受けたが、検討会メンバーが同じ薬剤師コミュニティに属すことを日経ビジネスオンラインが詳しく報じている。利害の対立する問題で一方の当事者ばかり集め、法律を曲解して憲法の定める営業の自由を無視し、パブコメを無視してお手盛りの省令で利権を死守できるなら、何のために国会で法案を審議して、省令をパブコメに付しているのか理解できない。きっと民主主義を演出するための儀式に過ぎないのだろう。

ただし、これら15人の委員の背景を調べると、ほかにも肩書があることが分かる。そうした肩書を考慮して整理すると、バラバラに見えていた委員が、ある大きな一塊にまとまったのだ。
それは、北里大学の井村伸正名誉教授を中心とする「井村グループ」とでも言うべき塊である。
(略)
つまり、検討会には、同じ財団法人に属する薬剤師コミュニティーの3人の重鎮が君臨するのだ。薬剤師コミュニティーという意味では、ここに薬剤師クラブ会長や神奈川県薬剤師会理事を務める、日本チェーンドラッグストア協会の小田兵馬副会長も加わる。

薬事法については過去に違憲判決もあることだし、戦術としては炎上する前の段階から経済産業省総務省が法令協議で粘るべきだったと嘆いても後の祭りではある。選挙も近いしネット業界と薬剤師とを頭数で比べたら民主主義の手続きを踏んでも規制色の強い落とし所とならざるを得ないかも知れない。それでも民主主義の手続きを踏んで規制が行われるならば民意なのだから仕方ないと諦めがつく。問題は今回の施行規則が、かなりの影響が予想される割に、利害調整としての公平性を欠いている点ではないか。
薬剤師という職能集団が専門家として薬を売る場合の安全策について議論することは当然だが、議事の進め方はじめ利害調整の進め方としてアンフェアに過ぎる。彼らが自分たちの権益を守るために発言しているのか、それとも真摯に患者の安全を考えているのか判然としないことは、結局のところ薬剤師コミュニティや厚生労働省の威信を損なう気がするのだが。
情報通信業界に身を置く者としては、厚生労働省の手法があまりに旧態依然としており、利害調整のやり方としては稚拙に過ぎる気がする。とはいえ通信の世界も通信自由化以来、紆余曲折を経て公平性や透明性を高める努力を重ねてきたのであって、今回のことで薬事行政に対する関心が高まり、薬剤師コミュニティの手前味噌ぶりが詳らかにされれば、これまで以上に説明責任を意識せざるを得なくなり、3年も経てば比較的公平な座組みが用意されるのではないかという淡い期待もある。
できれば施行前までに利用者の本人確認、販売の安全性確保と登録販売員によるユーザー・サポートを条件に第2類医薬品のネット販売を認める、といった譲歩を引き出せれば良いのだが、仮に施行令が実施に移されると薬事法施行令の違憲性を問う行政訴訟とか、関係者に対して損害賠償を請求する民事訴訟などが起こされるのだろうか。施行が強行されて様々な矛盾が噴出し、官製不況、薬局空白地帯の切り捨て、違法な薬物販売に対する法執行の不備などを個別具体的に拾い上げるなど様々な戦い方が考えられる。6月からの施行となれば前後に衆院選もあるし、どういったキャンペーンが効果的か考え、仕込み始める必要がありそうだ。