雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

青少年総合対策推進法案は広範なメディア規制への布石か

閣法で青少年インターネット利用環境整備法の改正案が出ているなんて寝耳に水だったので確認したら、ニート・引きこもり対策で新設する青少年総合対策推進本部にインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議を統合する改正案だった。趣旨の共通する関係閣僚会議の統廃合には総論賛成だが、インターネット利用環境整備法の定義する青少年が18歳未満であるのに対してニート・引きこもり対策の対象年齢は幅広く、同じ青少年という言葉で括ると混乱を招きかねない。本法案が新たな言論統制を定めるものではないが、広範なメディア規制へ容易に拡大できる建て付けは廃案となった青少年有害社会環境対策基本法案を彷彿とさせる。

政府は6日の閣議で、ニートや引きこもりの若者の自立支援体制を整備する青少年総合対策推進法案を決定した。これまで児童相談所職業訓練機関、非営利組織(NPO)などがばらばらに取り組んでいた福祉、雇用、教育支援を地域ごとにネットワーク化。さまざまな相談を一元的に受け付ける「青少年総合相談センター」を設けることなどを盛り込んだ。

この法案の趣旨が18歳以上も含む若年無業者の就学・就労支援にあるのだとすれば、政策対象を青少年という言葉で括り、基本計画をインターネット利用環境整備法と共有する理由を理解し難い。だいたい若年無業者の就学・就労支援を「青少年の健全な育成」と括ること自体、OECDからも指摘された硬直的な労働行政の失敗を棚上げし、無業者が健全ではないと示唆する点で甚だ不見識だ。
若年無業者対策が重要であることは論を俟たないが、あえて青少年の定義を混乱させて健全な育成なる父権主義的かつ曖昧な目的を掲げるのは、18歳以上も視野に入れた将来の広範なメディア規制への布石ではないか。なし崩し的な18歳以上や活字を含む広範なメディア規制に道を開かないためにも、法案の目的を若年無業者の自立支援に絞り込み、会議や基本計画は青少年インターネット利用環境整備法から切り離すべきだ。

第一条 この法律は、青少年が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、青少年の健全な育成(以下「青少年育成」という。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるほか、青少年が自立した社会生活を営むことができるようにするための支援その他の施策を定めるとともに、青少年総合対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な青少年育成のための施策(以下「青少年総合対策」という。)を推進することを目的とする。

(略)

(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正)
第三条 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(平成二十年法律第七十九号)の一部を次のように改正する。
  目次中「インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議等」を「基本計画」に改める。
  第二章の章名を次のように改める。
    第二章 基本計画
  第八条から第十一条までを次のように改める。
 第八条から第十一条まで 削除
  第十二条の見出しを削り、同条第一項中「会議」を「青少年総合対策推進法(平成二十一年法律第▼▼▼号)第二十三条に規定する青少年総合対策推進本部(第三項において「本部」という。)」に、「定めなければならない」を「定め、及びその実施を推進するものとする」に改め、同条第三項中「会議」を「本部」に改める。
(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第四条 前条の規定による改正前の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(以下この条において「旧法」という。)第八条第一項に規定するインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議が旧法第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画は、この法律の施行後は、本部が前条の規定による改正後の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律第十二条第一項の規定により作成した同項の基本計画とみなす。