ブラック企業とIT技術との微妙な関係
間違って飛び込み苦しんだことがあるが、確かに世の中ブラック企業ってのはある。入社時に避けたって取引先や案件でぶつかることもある。しかし若いうちに買っておいて損のない苦労もある。体力が衰えてから当たるとしんどいし、理解できない理不尽な状況の背後に、人間心理なり世の中の本当の仕組みが垣間見られることもあり。
収益面で余裕のある会社はリーズナブルに運営されている場合が多いけど、それは余裕があるからできることで、社員がそう感じられる環境の方が成果を発揮しやすいし無駄なコストが発生しないからそうしているのであって、決して世の中が最初からリーズナブルにできている訳じゃないのだろう。
たぶん昔から理不尽な会社って結構あって、みんな赤提灯で憂さ晴らししていたのかも知れないけど、ネットで情報交換して、あれはおかしい、これはおかしいとやっていくと、結構な会社が労働基準法に抵触していたり、ブラックじゃね、みたいな話になるのだろうか。
とはいえブラック企業がブラック企業であり続けることができたのは、それで社員がついてきて、市場から受け入れられるだけの価値を提供できていたからで、単にネットで横の情報交換が進んだことが変化なのだろうか。それとも今も昔も問題企業は問題企業と認知されつつも、人材を確保できていたということだろうか。或いはまた、メンバーシップ社会であれば成り立っていた会社と従業員との共依存関係が、徐々に崩壊しつつあるのだろうか。
ところでPOSとかCRMとか、ITソリューションのかなりの部分って特に米国由来の概念は人材流動性が激しいことによるサービス品質の低さを補うように設計されていて、職場がIT化されることによって、人の入れ替わりが激しいブラック企業であってもサービス品質を担保しやすくなり、却ってそういった企業が温存されることは考えられるだろうか。
ひところの十年泥論争とかブラック企業がIT業界に多いという誤解もあるが、わたしの乏しい経験から推察するに、受託系ベンダの文化の歪みは客先業種の宿痾であったりする。客が元請けに威張り、元請けが下請けに威張りの食物連鎖というか。恐らく虐げられいる人々の情報発信力が高いのがIT業界で、他の業界だと情報発信する余裕や機会がなかったり、という仮説も考えられる。仕事って大変なのが普通だし、法律だってみんながみんな守っちゃいないのは昔からだし。
昔と比べて武器は増えて戦いやすくなった反面、オプションやら真偽の定かじゃない情報が増えすぎて、何を頑張ると本当に幸せになれるか、却って分かりにくくなったかもね。
- 作者: 黒井勇人
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?ネット上の掲示板で、就職活動中の学生たちの間で、「ブラック企業」という言葉がよく登場するようになった。「ブラック企業」をテーマにした映画も2009年冬に公開されるほか、同様の書籍も次々発刊されて、ネットで使われるスラングから流行語になりそうな勢いだ。
この内部労働市場が職種を超えて広がっていくのが50年代であり、若者が学校卒業とともに就職するのが当たり前になっていく時期でもあるという意味では、日本がジョブ社会としての性格を最終的に失い、メンバーシップ社会に純化していった時代であったと言うこともできるかも知れません。