雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

テレビで『官僚たちの夏』の前宣伝がすごい件

平日はテレビなんてみないんだけど、久々にダラダラ見ているとTBSで『官僚たちの夏』の宣伝がすごいのね。僕は城山三郎が大好きで『官僚たちの夏』も素晴らしい作品だ。しかし、この時期に肝煎りでドラマ化することに対しては強い政治的意図を感じる。
本書の描く産業政策への官僚たちの情熱と効果への期待は、バブル崩壊の頃まで通説として広く人口に膾炙した。サブプライム危機以降の経済状況で、緊急の財政出動を行うに当たっても、例えばグリーン・ニューディールのように産業政策的なアプローチが世界的にも復権しつつあるかにみえる。
近々総選挙があって、恐らく官僚と政治との関係の在り方は重要な争点となるのだろう。つい先日も空前の規模で補正予算が組まれ、難視聴対策やら貧困層向けの受信機配布、エコポイントによるテレビ買い換え促進やらで放送業界に対して大規模な補助が出ている。これらの政策への賛否を議論する気はないが、この時期に官僚主導の振興行政へのノスタルジアを煽るって実に素晴らしき「放送の不偏不党、真実及び自律」ですね、とか考えさせられる。
まあ世界中で財政政策が経済を支えるようになって、ネットが残念と騒がれる一方で新聞もテレビも儲からなくなりつつある時代に、放送の公共性とか官僚神話を改めて考え直す機会を与えてくれた点ではグッジョブか。これで産業政策の効果を巡る論争に日が当たって過去の神話が見直され、或いは不毛な官僚バッシングに歯止めがかかれば、必ずしも悪い話ではないかな。

官僚たちの夏 (新潮文庫)

官僚たちの夏 (新潮文庫)

凋落を決定づけたのは、先に挙げた松本清張氏が描いた時期に起こった「特定産業振興法」の挫折である。詳しい説明は省くが、同法案は佐橋滋氏を中心としたグループが、自由化に備えて国内産業を通産省主導で合併、資本増強しようとするものであった。強制的に拠出を迫られることが予想された金融業界が反対するのはもっともだったが、この法案が審議されていた63〜64年には既に製造業も通産省の過保護ともいえる産業政策に反対するほどになっていた。この法案は「スポンサーなき産業振興案」と呼ばれ(例えば朝日新聞論説委員土屋清『文芸春秋』1963年5月号)、以降「佐橋連帯」と呼ばれた保護主義的な通産省の路線は消滅していく。