雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

景気回復の気配と雇用流動化策への思考実験

景気が微妙に上向いているが、こういう時期は仕事が増える割に雇用は増えず、労働条件が悪化する場合がある。サービス残業をなくせれば景気に反応して採用も増える可能性があるが、流動性を高めて景気回復に沿って雇用を増やし、小さな行政コストで効率的に労働環境を改善できないものか。

つぶさに見ると、先に契約解除された人たちが再雇用されている。それも、世界同時不況到来前に定年をむかえた後、契約社員として雇用されていて、今年はじめに契約を打ち切られたという古強者たちが、率先して召集されているのだ。彼らは長年にわたる経験の蓄積があり、しかも安価である。そして、あまり考えたくないことだけれど、仮にふたたび景気が下向いたとしても、定年後の彼らを再リストラするのは容易だろう。

内閣府は8日、9月の景気ウオッチャー調査を発表した。3カ月前と比べた街角の景況感を表す現状判断DI(指数)は前月比1.4ポイント上昇の43.1と2カ月ぶりに改善。 (略) 2〜3カ月先の景気見通しを示す先行き判断DIは0.5ポイント上昇の44.5となり、3カ月ぶりに上昇。ただ、企業部門では価格競争への不安や円高の進行を懸念する声が目立った。

だいたい労働基準法監督官庁である厚生労働省が守れていないことが問題で、公務員に争議権を付与するだけでなく、労働時間も残業代の支払いも役所から範を示すべきではないか。法定定員と仕事量がアンバランスなのだろうが、公金で運営されている役所さえ守れていないことをグローバルな競争に晒されている民間に押し付けるとは如何なものか。
現実的に役所が遵守できる水準へと労働規制全般を見直す一方で、違反した企業に対しては効率的に法執行する方法を考えるべきだ。例えば長時間残業の実態に沿った残業代を支払うか、官民ともに高度な頭脳労働に対してはホワイトカラーエグゼンプションを認め、政策の専門家として余人をもって代え難く、引き続き長時間働いてもらう必要のあるスタッフは対象となる水準まで賃金を引き上げる。これで人材交流の障壁だった給与水準の格差が埋まる。一方で官民とも解雇の金銭的補償を認め、これが効率的かつ確実に執行できるよう従業員の賃金よりも高い債権の返済順位を付与してはどうか。
天下りを禁止するとして全て定年まで面倒をみるべきという意見も長期雇用の幻想に引っ張られた発想だ。人材派遣会社が官公庁向けの営業を強化しているが、格差是正を標榜する新政権が率先して身分の安定性や賃金の格差を助長してどうするつもりか。官僚の専門性が活かしにくく自力での再就職が難しいという主張も首肯しかねる。これだけ優秀な人材集めて社会で通用し続けるために必要な自己啓発の時間を取れないほど拘束しているとすれば、それこそ問題ではないか。
例えば無駄に時間と労力を浪費する国会待機や想定問答といった慣行は見直されただろうか。見直すべき無駄は予算の使い道だけでなく、霞が関での仕事の進め方自体にもあるのではないか。法律に起因しない民間の雇用環境を政策で変えることは難しいが、役所が新たな雇用慣行の潮流をつくることはできる。
と、ガチガチのリバタリアンと比べたらかなり穏当かつ公平な提案を考えたつもりだが、専門家でも実務家でもないので机上の空論であるかも知れない。弱者としての労働者を守るために規制は引き続き必要だが、それは過去に約束された既得権を守るためでも、特定の価値観に基づく教条的な正義を他人に押し付けるためでもなく、できるだけ公平性を担保しつつ持続可能な社会を築くために設計されるべきだ。