雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

新卒就職支援事業の執行停止は縦割り行政か

大学講師の末席を汚す者として学生の就職動向は気になるところだが、新卒就業支援の予算執行停止を縦割り行政と批判するのは、ミクロとマクロを混同してはいないか。ミクロ的には教育の質や就職指導が就職率を大きく左右することは論を俟たない。しかし国が補正事業として薄く広く行う場合、マクロ的には事業自体が多少の雇用を生む他、雇用のミスマッチを多少は改善できるとして、公平かつ効率的な財政支出かどうか議論を要する。

それでいて、長妻大臣や菅大臣らは来年春に学生たちが職に就けない状況を生み出してはいけない、などと二枚舌を弄しているか)無知なのか、のいずれにみえるわけ。少なくとも雇用対策ではなく、彼らが狭義の縦割り行政前提の「雇用対策」しか考えていないのがよくわかるように思える。

このところ学生のキャリア意識も不況でかなり堅実となっており、これから手厚く支援することで大幅な就職率の改善を図ることは難しいのではないか。そこで埋まるミスマッチは本来であれば第二新卒なり既卒失業者、ロスジェネ世代が得られた職ではないか。そもそも労働市場で相対的に有利な新卒学生に対して、行政が特別に支援することは若年失業を固定化している新卒優遇の雇用慣行を強化することに繋がらないか。
ミクロ的に個々の大学が就職率で評価される現実があり、指導教員も大学も学生の就職に心を砕くべきだ。しかしマクロ的には雇用を増やさないことには誰かがあぶれることを考えると、失業対策はあくまでマクロ経済政策を通じて行うべきではないか。学生のキャリア・リテラシーがミスマッチを解消するのは恐らく不況期よりも好況期で、経済対策のための補正予算で新卒就業支援を手当てするのは効率性・公平性の両面から筋が悪いと考えられる。
わたし自身がロスジェネの割に就業で苦労したことがないので、正直なところ大学による就職活動がどのようなものか知らないし、補正予算の中身がどれくらいの政策効果を発揮し得るかについて分からないところもある。しかし失業対策はマクロの需給ギャップや、既卒者や留学生に対する雇用差別の解消など全体の優先順位や公平性を考えるべきであって、それを縦割り行政と批判することに対しては強い違和感を覚える。