Twitter上のニセ鳩山首相が投げかける波紋
ニセ鳩山首相がTwitterに湧いているという話は今日たまたま寄った役所で聞いて、まあしかし勝手に名乗る分にはIdentity Theftに当たらないんだよねえ、とMSN Spacesのベータ版が始まった折ボスだった古川さんがブログを始めようとしたところsamfは先に取られててFurukawaBlogとなった件だとか、はてなにもid:jkondoとid:j-kondo、id:umedamochioとid:mochioumedaがいて紛らわしいなんて与太話をしたのだった。久々に確認したら何か消えてるけど。
インターネットのコミュニケーションサービス『Twitter』(ツイッター)に鳩山由紀夫首相の偽者が出現したと話題になっていたが、当編集部の独自取材により、その真犯人が明らかになった。『Twitter』で “nihonwokaeyou” というIDを使用して鳩山首相になりすましていたのは、ソーシャルワーキングサービス『非モテSNS』のスタッフ “メガネ王” 氏。彼は『Twitter』で “meganeou” というIDを使用して活動しているものの、別アカウントを取得して鳩山首相になりすましていたという。
しかし今回の件、片山さつきさんがfollow meしていたり、折しも鳩山首相もTwitterをやると宣言したところでコロッと騙された人も少なくないのだろう。せっかくTwitterが政治家の間で広がり始め、ネット選挙解禁への道筋も見えつつある中で間が悪い。ほーら、やっぱりネットは信用できないじゃないか的な議論が再燃してしまうのだろうか。実際その程度に信用できない代物ではあるし、一国の首相が始める前にリスクが顕在化したことを喜ぶべきだろうか。
やっぱ政治家や経営者はオフィシャルアカウントにすべきだろうか。ところでオバマ大統領はオフィシャルアカウントだけど中国で「自分はTwitterやってない」とか講演していたし、まあスタッフと勝手に名乗るのとは違う、みたいな話はある。実は今回のニセ鳩山首相に先立ち、浅尾慶一郎議員のスタッフが勝手に浅尾氏のアカウントでおかしなことを書き込んだり、平沢勝栄議員のmixiアカウントが当初は本人が認めたものが、イベント終了後も話を持ちかけた支援者?が勝手に運営し続けて後に問題を起こしたり、意外とトラブルが少なくない。これらは本当のIdentity Theftだけどね。名乗るだけなら元祖でニセ首相官邸というのもある。何故か安倍政権で止まっているけれども。
名前なんて同姓同名も少なくないしペンネームだって認められているのだから、有名人の名前だって名乗るのは勝手だという考え方もあるだろうけれど、当人が有名人を意識して似せたり演じているものは明らかに「なりすまし」の一種だよなあと思う。だから法律で規制すべきかというと難しいけどね。民事で裁判を起こしたら名誉棄損なりで認められる場合もあるかなあと考えたが、本人の評判を傷つけるようなものでない限り被害を主張することは難しいし、まあ大して賠償金も取れないだろうから訴えるだけ損という議論ではあるだろう。
こういったことが自由だという話になると、自分がよく使うユーザー名やら誤解されがちなアカウント名は使う予定があろうがなかろうがドメインと同じように押さえるって話になるのかも知れずそれはそれで世知辛い。10年ちょっと前にeコマースが流行る流行らないの議論をしていた時は、本人確認というと電子認証やら生体認証といった仰々しい議論で、暗号強度がウンたらとか分かったような口を聞いていたのだが、それから10年以上も経って相変わらず多くのWebサイトは普通にIDとパスワードで認証し、勝手に名前を名乗られた的な原始的手法が相変わらず議論され続けていることには徒労感もある。技術なり規制なりで解ける部分もあるのかも知れないが、こういう状態がどうして結局のところ変わらなかったのか、立ち止まって考え直してみると意外と根は深そうだ。
暗号屋さんは論理的なトークンの真正性なり偽造不能性でもって信頼を考えるが、多くの利用者は暗号リテラシーもなければ使っているサービスのソースコードを覗けるわけでもない以上、何を信じて大丈夫かという指標は実際のところないし、どんな画面上のビットマップであっても再現できないことなんかない訳だ。で、使途によっては暗号パズルの使い道もあるが、個々の場でのアイデンティティ同一性を考える場合に、最終的には主張の一貫性やら書き込みの履歴やら周囲との関係性といった現実世界でのアイデンティティの同定と似たようなクロスチェックをせざるを得ないのだろう。しかし、それらが正しく機能するかというと疑わしい。