雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

自殺が反社会的であるかは別として,通信の秘密は重要だ

第9回総合セキュリティ対策会議(平成15年12月10日)発言要旨

(事務局より説明)

  • ネット上での反社会的書き込み事案における情報共有

(質疑応答)
自殺の書き込みについては、「反社会的」であるから対応するというよりも、人命救助の観点から対応しなければならないという表現にすべきではないか。また、一般からの情報を受け付ける窓口を設けてもよいのではないか。

被害届や令状がなくても人命に危険の及ぶ緊急の「反社会的書き込み事案」であるから,憲法電気通信事業法で規定された通信の秘密に抵触しても緊急避難として許されるという話だと,例えば自殺だけでなく,テロ予告情報とか,ひいてはテロに対する予防的な盗聴にまで拡大解釈される懸念を感じていたのだけれども,この議事録を読むと自殺については「反社会的書き込み事案」ではなく「人命救助の観点から対応しなければならない」という表現に変わっていて,方向性としては正しい.ただ,無差別テロ対策等も自殺と同様「人命救助の観点から対応しなければならない」ともいえるし,ネット上の公私の区別,保障すべき通信の秘密の範囲については,議論が交錯しそうな予感.
総務省でも議論されているのに,報告書では触れられていない.結局,総務省でも結論は出ていないということだろうか.なし崩し的にISP担当者が緊急避難的な判断を続けることは,合法的とはいえ民主主義としてはあまり健全ではない気がする.困ったもんだ.自殺はまだいいけど,もっと政治的に微妙な案件が出てきたらどうするんだろう.

次回のised設計研へ向けて

議事録の公開はだいぶ先になるが,土曜のised理研はかなり問題の本質に迫れた.これまでの混迷は『情報自由論』が刊行されていないが為に,その辺の問題意識に対してばらつきがあったことも一因だろう.ネット上の公共圏を巡る曖昧な議論が逸れはじめたのは,実は現実世界で自明であった私的空間の定義がサイバースペース上ではいたく難しいことに話が及んでからの第二部後半,最後の1時間くらいの議論でのことである.
前回の八田発表と並んで倫理研,設計研の議論の接合点がみえてきている.と同時に,次回の設計研はこれらの論点を網羅した上で,問題抽出と解決へ向けた選択肢の提示が求められよう.つまり

  • アーキテクチャの再定義可能性とは何か
  • ネット上の公共圏,私的空間を誰が線引きするのか

というふたつの問いを踏まえた発表が求められている.現時点で

  • 誰が情報社会を設計するのか

というお題で準備を始めているが,もっと論点を絞るかも知れない.ここで備忘録として,鍵となる論点を列挙しておこう

  • 構造の違いによる技術革新への適応性
  • モジュール構造とネットワーク外部性
  • 標準間競争と標準であることの根拠
  • 柔軟性と洗練とのトレードオフ
  • 取替可能性か相互運用性か
  • 分割統治された情報社会で民主主義の前提が成立しない理由
  • 「可能とする技術」が新たな政治的対立を生む理由
  • 泡宇宙を繋ぐ誰か