思ったほどぶっ飛んでなかった雲の時代
このところ誰も彼も雲のことを語るようになったが、ぶっ飛んだ話がないね。1980年代後半くらいから分散OSでプロセス移送とか、Plan 9やInfernoのような分権モデルとか、ひところ騒がれたJava SpacesやJiniの黒板モデルとか、エージェント指向とか、面白いコンセプトは色々あったんだが。NetscapeにOrbixが載ってObject Webの時代が来るんだなんて議論もあったが何も起こらなかったし。
気づいてみるとデータセンターの建設競争とか、そこで動いているOSは普通にLinuxとかWindowsだったり。ちょっと新しげな仮想機械だってCPの昔から数えると三十有余年。要はデータの分散と索引、管理の自動化とかは重要だけど実行モデルを触っても何もhappenしなかったのか。それともデータセンタの中でブラックボックス化されているだけで、実はスゲー画期的なミドルウェアが動いている世界もあるんかな。そういえばブルックスのおっさんも、処理はいくらでも後から書き換えればいいが、データ構造が腐っていると救いようがないとか書いてたっけ。
ところで電脳コイルに古い空間とか新しい空間という概念があって、古い空間にいくと色んな化け物がいたり、不思議な現象が起こったりする。で、古い空間をみつけるとさっちゃんとか2.0がフォーマットをかける訳だが、それをみて、ああ、コンセプトを描いたひとはオブジェクト・データベースとかに造詣があって、スキーマ進化とかを念頭に置きながら考えたのかなあ、とかふと思った。とかいいながらスキーマ進化って概念も大学生の頃に読んだObject Storeの本を読んで概念的に何となく理解しているだけで、ちょっとだけPSEを触ったけれども真面目に使い込んだ試しがない。
OODBも流行らないのに分散OODBなんて現実的じゃない気がしていたけれども、SecondLifeのバックエンドとかどうなっているんだろう。少し気になる。Simのバージョンにばらつきとか出てくると、古い空間、新しい空間みたいな概念が本当に出てくるかもねえ、ひょっとして。
ゲームはライフサイクルが短いのでレガシー問題とかあまりなかったが、SecondLifeのようにメタバース内のモノに金銭的価値が生じたり、モノに様々なロジックが張り付くと、いずれ複数バージョンの混在と緩やかに連続する世界、みたいなものが実際の問題になるのかな。閑話休題。
結局のところ雲って何だ?って考えはじめると、よく分からない。OSとしてSingle System Imageにみせる技術もあったがイマイチ流行らず、ともかくPCを山ほど並べてサービスとして疎結合で繋げる方が最近の流行り?Ajaxとかも端末側にもJava Scriptで若干のロジックがあって、見立てによっては結構な分散システムといえなくもないのかな。けど夢はないよね。夢に足を取られず、キラキラした技術に淫せず、誰に何を提供するのかという目的と、それに対する直線的な手段にfocusできたプレーヤが成功しているようにもみえる。が、キラキラした技術に淫するのは楽しいんだよね。
だから世の中、結果的に雲のようになっていくにせよ、雲の実現技術とか構成要素と称される諸々の中にはガラクタや罠が満ちているに違いない。技術も異性も、素敵に騙してくれてる間は幸せだから別にいいんだけどさ。