雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

WSD談義にみる電波法の軛

隙間でよければアナログ停波前から使えそうな周波数は細切れである訳で。日本でホワイトスペースが話題に上がらない理由は、恐らく電波法の枠組みの違いに起因するのではないか。米国の電波関連法制は混信を防ぐことを目的に制度設計されているが、日本の電波法はお上が免許人に対し数年だけ決まった周波数の利用を許してやるという体裁だから、つい最近までアンダーレイ*1でさえ制度上できなかった。実は僕が最初に書いたパブコメのネタだったりする。
日本の著作権法フェアユースがないことが検索エンジンや動画投稿サイトなど技術革新を阻害する一因となっているが、電波にも似たような問題がある訳だ。これは大陸法の宿命というが、欧州でのIPTVの動きなどをみていると、日本は大陸法だからと言い訳できないくらい日本だけが出遅れている。法体系に起因するハンディがあるとはいえ、本質的には未来を見据えた利害調整という政治や政策の本来的な役割が、きちんと機能していないようにみえる。
米国でWSDが実用化されれば無線LANの時と同様に導入論議が出てくるだろうが、では何に使うかというとピンと来ない。米国の場合はADSLが数百Kbpsで光ファイバは普及しておらず、多くのユーザーはCATVインターネットを使っていることもあり、低めの周波数をアクセス回線に使えるとメリットがあるが、日本は既に携帯データ通信も充分に高速化しているし、月額数千円でGEPONベースの光アクセスを買える。DSLも光も地デジも届かずWiMAXで救おうと検討されている地域とか、そのWiMAXでさえ設置が困難という山間僻地を救うには、低めの周波数でよく回り込むWSDは便利な気もする。けれどもそれは儲かる市場でもなければ、世界を変えることにもならない。
米国と比べて日本の地上放送局は真面目にカバレッジを広げる努力をしているし、地デジと干渉する訳でもないIPTVの推進でさえ政治的に困難を極めている日本で、そもそも法体系と相性が悪く、さらに地デジを邪魔するかもしれないWSDを推進することは非常に難しいだろう。けれども米国でそういった技術が検討されていることは面白い動向だし、そういう技術が開発されていると心に留めておくと、どこかで面白い使い途が出てくるのではないかと期待している。個人的にはテレビのアンテナ経由で周囲の家とメッシュ網を組んで、バケツリレー式のP2Pでご近所CDNを組めたら楽しそうな気もするが用途があるかは怪しい。
日本のように硬直的な法体系の外部費用って、技術革新について使途がなければ政治が動かず、魅力的な使途があったら今度は利害調整が難しくなるとか、簡単には馬鹿なことを始められないことかも。免許不要局でWSDが使えると、いろいろ面白い悪戯ができそうな気もするんだけどなー。こうやってウジウジ考えて空回りしていることが一番のコストだったりする訳だが。案ずるより産むが易しだったりするのかなぁ。けど俺、いったい何をやりたいんだろう。。。

来年2月のアナログ放送停止を前に、米国では700MHz無線免許競売や移行認知キャンペーンなど、テレビ業界を巡るさまざまな動きが表面化している。なかでも特に注目を浴び始めているのが、無線LANより使い勝手がよいとされる周波数「White Space(ホワイトスペース・隙間周波数)」だ。グーグルやデル、マイクロソフトインテルなど大手ハイテク企業がこの周波数の利活用促進を政府に訴え、携帯電話会社も参入を表明。放送業界は反対するなど、業界間での激しい攻防が続いている。
(略)
日本のアナログ停波は2011年7月24日と約3年半先の話だ。そのためかホワイトスペースに関する議論は持ち上がっていない。ただ、米国がホワイトスペースの利活用に真剣に取り組んで、WSDが実用化されることになれば、日本でも導入議論は華やかになるだろう。

*1:周波数帯域を割り当てられた本来の用途と干渉しない電波の共用