雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

融合法制を巡る論考

ブログで呟くだけじゃ芸がないので遅ればせながらパブコメを起こす方向で検討中。改めて「通信・放送の総合的な法体系について(中間論点整理)」を読んでるんだけど、けっこう手ごわいな、という印象。いま悩んでいるのは融合法制って何をやりたかったんだっけという超基本的なところで、竹中懇ではネットに放送コンテンツを流すとか話していた気がするんだが、これは著作権法とか業界慣行の問題で事業法を触っても関係ない。えーっと、融合法制って何をどうしたいんだったっけ。
縦割り構造を横割り型のレイヤー構造にするというんだが、本当に全て新しい法律を起こす必要あるんだっけ。融合法制といってる間は法体系で法律がいくつあっても構わないように読めるんだけど、情報通信法(仮称)といった辺りから怪しくなってくる。
本来なら法律間の整合性さえ取れていればいいはずで、有線電気通信法と電波法をくっつけなくてもFMCに何ら支障はない。何かFMCの障壁があるとしてもピンポイントで条文改正をすればいい話で。有線電気通信法に緊急通信のことが書かれているのは構成として美しくないので事業法に移した方がいい気もするけれども、何か困っているわけではない。
放送法は事業とコンテンツ規律にまたがった法律になっていて、NHK放送大学のところは設置法に切り出した方が美しい気がするけど通信と放送の融合とは関係ない。電気通信事業法は通信自由化の折に電気事業法をモデルに設備規制として立法されたのが、VANとかネットの普及で気付いたら1万社以上を束ねる法律になっていて気持ち悪いことこの上ないんだけれど別に困っている訳でもない。電気通信役務利用放送法・有線テレビジョン放送法・有線ラジオ放送法・有線放送電話法とかは、名前だけみると丸ごと束ねたくなる気持ち悪さがあるけれど、それが通信と放送の融合を阻害しているかは疑わしい。そのうち諸々の事業法を束ねて新しい法律に再編できると美しい気はするけれど、2010年以降の業界再編も睨みつつ、現行法で何が問題か具体的になってから手をつけた方が意義のある仕事ができそうだ。
違法・有害情報対策関連法令は先日のネット規制法も含めてアツイ議論が交わされているところで、また違法情報対策とか様々な動きがあるだろうし、この辺を溶け込ませてしまうと、事件が起こるたびに改正論が出てきて面倒そうだ。コンテンツ規制は、ネット規制については個別の法律ができて、放送法は現在の規律を維持するというのなら、放送法ごと維持した方が楽ではないか。
すんごく不思議なのは、こんなに複雑かつ歴史ある法律を大幅に書き直して構成をいじって上程をされても、条文レベルで真面目に議論すると論点も関係者も多すぎて国会審議が何年たっても終わらず、その間に状況が変わって議論が振り出しに戻りそうな気がするんだけれども、ちゃんと霞ヶ関で汗かいたんだから永田町は細かい審議はすっ飛ばして通してねという話なのだろうか。2010年通常国会にドカンと巨大な法律を出すよりは、それぞれの法律が実際のところ通信と放送の融合や、その他の技術革新を阻害しているのか、という点について整理した方が良いんじゃないだろうか。
例えば電波法の場合、昭和25年の技術を前提に電波発射に対する事前規制となっている訳だけれども、PLCとかxDSLを考えると空中線から通信のために発射された電波だけでなく、電磁波に起因する不要輻射や相互干渉まで射程に入れるべきだし、UWBやWhite Spaceといった電波割当になじまない新技術への適用を考えると、干渉回避のための事後規制とした方が柔軟性が高い。
そういう具体的な新技術導入議論の方が大事な気がするんだけれども、現行の電波法を情報通信法(仮称)に組み込んで、旧電波法に紐づいた政省令・告示・通達の見直しをやると、それだけで足掛け3年はかかるだろうし、そこから情報通信法(仮称)の旧電波法部分を抜本的に見直して再び政省令・告示・通達の見直しが必要になるなんて気が遠くなる。White Spaceは米国でも6年くらい議論している訳で、技術基準とかストレートに合意できる筈がないんだから、すぐにでも議論とか調整を始めた方がいい。
こういうことって本来なら一昨年の「通信・放送分野の改革に関する工程プログラム」が出た時点で気付いているべきだったんだけど、どうしてスルーしちゃったんだろう。たぶん青少年ネット規制法の騒動に巻き込まれて、小さな法律ひとつ通すのも面倒なんだな、ということを学んだから、そういうコスト感覚を肌で感じられるようになったのかも知れない。という訳で、現時点で2010年の通常国会提出というスケジュールは非常に難しいけれども、仮に実現したところで、どうやって国会を通すのか、ということを誰も議論していない気がするのは、気のせい?それとも青少年ネット規制法がトラウマになっているだけかなあ。

手続であるか否か 任意の意見募集
案の公示日 2008年6月14日
意見・情報受付開始日 2008年6月14日
意見・情報受付締切日 2008年7月14日
関連資料 意見募集要領 中間論点整理 報道資料 中間論点整理のポイント