雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

出会い狩りの先にある世界

mixiから出会い云々ってコミュが一斉に消えたとき、やり過ぎじゃないかと心配した。警視庁から削除要請があった段階で、コミュ運営者だけでなく利用者に経緯と利用規約の趣旨を説明し、充分に検討した上で対応を決めるべきだったのではないか。利用者に対して充分な説明責任を果たさず率先してコミュを削除し「出会いを求める書き込み=出会い系まがい」という出会い系サイト規制法の範疇を超える論理を、事業者として業界に率先して追認したことは残念だ。
もとの出会い系サイト規制法は出会いを業として仲介するサービスに対する法律で、一昨年末に閣法で改正案が提出されたときはSNSやプロフに規制が波及しないよう施行規則の細部に渡って業界・各省が議論し、パブリックコメントに付された経緯がある。それが法律の施行されるなり出会い系サイト以外でのトラブルが改めて提起され、2月ごろからマスコミを通じたキャンペーンや事業者への削除要請が続いている。
今もmixiのコミュニティで「出会い」と検索すると0と表示される削除の爪痕が生々しく残る一方で、明らかに男女の出会いを促しているコミュニティで生きているものも少なからず残っており、実際どういった基準で消しているのだか判然としない。まず利用規約で「面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等」と一括りするセンスに絶句するし、だいたい未成年に対してコミュニティの利用を禁じているのであれば、そこまでコミュニティの運営基準を厳しくする必要があるのだろうか。
上場や法改正といった外部環境に翻弄され、規約をコロコロ改定して利用者がサイト上で積み上げた関係やデータ資産を蔑ろにする運営を続けていれば、更なる利用の空洞化を招くのではないか。当局も出会い系サイトを規制すれば被害がSNSに移り、国内SNSをEMAの自主規制や警察からの削除依頼で厳しく取り締まれば、マイナーな草の根サイトや国外サイトに移って更に取り締まりは難しくなるとは考えないのだろうか。実際わたしの場合、数年前mixiを楽しんでいた頃の関係は概ねtwitterFacebookに移ってしまった。
いまの携帯フィルタリングでさえ、使えないサービスが続出することから親の判断で外すケースが少なからずある。結果として家庭に問題を抱えたリスクの大きい子たちは無関心な親からフィルタリングを外してもらって自由なケータイを謳歌し、リスクの小さい保守的な親の子たちは過度に息苦しい世界へと閉じ込められてしまう。結果として大して犯罪抑止の効果は期待できず、新たな子ども向けサービスを提供しようというベンチャーに対して大きな参入障壁となり、コミュニティ・サービスの国外流出で紛争解決や犯罪捜査は却って難しくなる懸念もある。
ネットに出会いを求めるほど暇じゃないし、幸い自分の参加するコミュはお取り潰しの憂き目に遭っちゃいないが、黎明期から使っているSNSが空洞化するのは忍びない。書き溜めた日記やマイミク、参加するコミュニティといった資産も残っている。せっかくオープン化するなら日本国内のサーバーで直接運用する白mixiはEMAガイドライン準拠の超健全サイトを標榜し、届出出会い系サイトの赤mixi、日本法の及ばない米国のクラウド上とかに黒mixiでもつくって、規約違反でコミュニティを閉鎖する場合は赤mixiや黒mixiへの移転をofferして、白mixiから外部の連携サービスへは適切な場合のみリンクが張られ認証される仕組みにでもできないか。
マスコミは出会い=不健全という構図を所与のものと報じているが、そもそも孤独なひとこそ出会いや関係が欲しくてカルトとかマルチにはまってしまんであって、出会いを抑止しては犯罪や社会不安、反社会的活動を増さないか。未成年が不用意に悪意ある大人と出会わないようにするための仕掛けは必要にしても、18歳以上しか使わない機能で業として出会いを仲介している訳ではないコミュを片っ端から潰す姿勢は如何なものか。出会い系サイト規制法の法文だけ読む限りそうでもないのだが、施行規則や解釈基準をみるとmixiの対応はあながち過剰反応ともいえない。
失業率が上がって暇な大人が増え、自殺も犯罪も増えそうなご時世ではあるが、出会いが犯罪被害の原因なのか、むしろ社会的厚生を高めて犯罪を抑止しているのか、もっと精緻な議論が求められるのではないか。出会い系に出会いを求めざるを得ない時点で社会から疎外されているのであって、サイトから出会いを排除したところで別の出会いを頑張って探すだろう。むしろ満たされていない人々に安全な出会いや社会的接触を促すことの方が、社会からの逸脱や犯罪を抑止する上で効果的な手立てとならないか。

なお、異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、事業を行う者が異性交際を求める書き込みの削除や書き込んだ者の利用停止措置を行っていれば、当該事業は、基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しないが、当該書き込みを知りながら放置するなど、事業を行う者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合がある。

警察庁は2009年2月19日、いわゆる「出会い系サイト」に関係した事件の検挙状況について公表した。それによると、2008年中に警察庁に報告された検挙件数は1592件、出会い系サイトを利用して犯罪被害に遭った児童(18歳未満)は724名。一方、出会い系サイト以外のサイトが原因で被害に遭った児童は792名だった。

ミクシィは3月19日、SNSmixi」で、ユーザーが交流する「コミュニティ」のうち、異性との出会いを目的にしたコミュニティを一斉に削除したことを明らかにした。サイト健全化策の一環。
同社は昨年12月1日の改正出会い系サイト規制法施行などに伴い、利用規約を改定。新たに「面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等を主な目的として利用する行為」の禁止を規約に加えた。

警視庁がインターネットの交流サイト「ミクシィ」や「モバゲータウン」などを運営する6社に対し、出会い系サイトと同様の内容の書き込みがあるとして削除を要請していたことが2日、同庁への取材でわかった。
少年育成課によると、交流サイトへの削除要請は初めて。ミクシィは既に約300のコミュニティーを削除し、他社も対応を検討している。

未成年にも人気の携帯交流サイト「ミクシィ」や「モバゲータウン」に、警視庁が異例の削除要請に踏み切った。
削除要請を受けた6社のうち4社のサイトは、携帯サイト業界などで作る審査機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」から「健全サイト」として認定され、フィルタリング(閲覧制限)対象から除外されている。認定サイトが児童買春の温床になりかねないと判断された形で、今後、審査のあり方も問われそうだ。

利用者がサイト内に設けたコミュニティが削除依頼の対象となっているようだが、これは何を根拠にしているのか。もし出会い系サイト規制法が根拠だとしたら、利用者がサイト内に設けたコミュニティが出会い系サイトに含まれると解されたのか。出会い系サイト規制法では出会い系サイト事業は「インターネット異性紹介事業」と呼ばれるのだが、利用者が設けたコミュニティを「事業」と呼ぶのは無理があるのではないか。

今後も、警察当局が、改正法をちらつかせつつ、特に届出を行っていないサイト運営者に対し、こういった圧力をかけてくる可能性は非常に高く、サイト運営者としては、何をもって「インターネット異性紹介事業」に該当するかについて曖昧さがつきまとうだけに、今後も厳しく苦しい運営を余儀なくされる状況が続くでしょう。
なぜ、人と人との出会いというものに対してそこまで目くじらが立てられなければならないのか、こういった立法の必要性、合理性といったことについて、素朴な疑問を感じる人も少なくないでしょう。